自分で自分の言葉をすり替えていた
心が言葉に変換された時に気持ちをズラしていた
月子が娼婦に向いているかどうかなんてオレには、よく判らないよただ、オレは
月子が、真っ直ぐにオレを見ている
オレは月子に娼婦になって欲しくないこんなのオレの勝手な本当に身勝手な気持ちでしかないんだろうけれどオレは、月子を娼婦なんかにしたくないんだ
娼婦になるのが月子の幸せになるはずがない
例え、それで月子が巫女の力を得られたとしても
娼婦になることで、この子が幸せになれるわけがない
オレは月子には、幸せになって欲しいんだ
何が幸せなのかは判らないけれど
でも幸せになる道を、目指して欲しい
黒森様ぁぁ
月子は、大粒の涙を零して泣いた
結局ヨッちゃんは、寂しがっている子たちを、みんな幸せにしたいんだよね
ヨッちゃんは自分のゲンジツと向き合いながら、でも、みんなを幸せにしたいって、そればっかり考えている
だからあたしたちは、旦那様にどんどん幸せにしていただいているんですわ
いや、違うよそうじゃないよ
オレはさっきの夢を思い出す
オレは子供の時から、独りぼっちで寂しかったからだから、眼の前に寂しそうな子が居たら、放っておけないだけだでも、それはオレの勝手な思いで願望でだって、オレ結局、何もできていないじゃないか
そんなことはありませんわお兄様は、わたくしたちに本当によくして下さっています
いや、全然足りないんだよオレは、ダメだから全然、力がないから本当なら、もっとやれなくちゃいけないんだ全然、間に合ってないよ
家族のことも、パンのことももっと、できないとダメなんだもっと
今のオレはミナホ姉さんや克子姉に、助けられて、どうにか生きているだけだ
まだ全然みんなの役に立っていない
そんなことないって、お兄ちゃんは本当によくやってるって頑張ってるってあたしは見ていたよマナは知っているよお兄ちゃんが、毎日、必死で頑張っていること
マナちゃん、ちょっと静かにして
ヨッちゃんはさ心の中に開いている穴が大きすぎて、判らなくなっちゃっているんだよ
子供の頃からお父さんにもお母さんにも、無視されて一度も、褒めてもらったことの無い子だからさ
頑張ってるねとか良くやったわねとか、褒められてにっこり、微笑んでもらって頭を撫でてもらったこととか、一度も無いんでしょ
オレは記憶を思い出す
亡くなったヨッちゃんのお祖母さんもそういうタイプの人じゃないでしょうヨッちゃんには優しかったと思うし、ヨッちゃんに色んなことを教えてくれた人なんだと思うけれどそのお祖母さんが居てくれたから、ヨッちゃんは心が歪まず、ひねくれずに成長できたんだと思うけれど
バァちゃん
ヨッちゃんのことを褒めてくれたりする人じゃ無かったんだよね
バァちゃんはバァちゃん自身が、オレの母親にイジメられていたから家事とか全部させられてでも、いつも文句ばかり言われてネチネチと、意地の悪い顔で酷いことばかり言われていたから
そういう生活を毎日送っている人が
孫のすることを見て褒めてくれたりはしないよな
バァちゃんが、オレを厳しく育ててくれたことは感謝しているよだって、そうじゃなかったらオレはとっくに絶望して、自殺していたと思うし
バァちゃんが、オレに教えてくれたことは耐えること、我慢することだ
ああ、そう言えばバァちゃんの笑った顔って、ほとんど見たことがないな
バァちゃんも、ずっと耐えて我慢していたから
そういう体験をしてきたヨッちゃんだから判らなくなっちゃっているんだよどこまで頑張ればいいのかあたしたちに褒められても実感が湧かないんだよ自分はダメな人間で、全然努力が足りてないって信じ込んでいるから
どうしてお兄ちゃん何で、自分がダメな子だって思っちゃってるのお兄ちゃん、こんなに頑張っているのに
そういう風に、育てられたからですのねお兄様のご両親に
瑠璃子が溜息を吐く
両親兄さんのお父さんとお母さん
不思議そうにルナが尋ねる
まあそうだな母親にはお前はダメな子だって、散々言われてきたなお父様に相応しい孫ではないとかオレの母親は、自分の父親を崇拝してたから
苦々しい思いがこみ上げて来る
でもさ母親が、オレに望んでいるのはとんでもない超天才とかじゃないと、無理なことばかりなんだよオレはバカなんだからさ、そんなことはできないって
小学校1年の小テストでさ百点を取ってきたらこんなものは、満点をとるのが当たり前なんですって言われたクラスで一番成績の良いやつの話を聞いてきて、どうして、お前はあの子みたいになれないんだって、何時間も説教されたわけがわかんないよ母親が、オレが誰よりも優れていて母親の父親の血が優秀だってことを示さないといけないって思い込んでてでも、オレは天才じゃないんだよっ
兄さん、その兄さんのお母さんが兄さんの勉強を見てくれたりはしなかったの
ルナが尋ねる
無いよ一度もオレはずっと独りぼっちでバァちゃんも大分、具合が悪くなっていた頃だしそれで
小学2年生になる頃に母親が、オレに言ったんだお前みたいな、ダメな子はわたしの子供じゃないってお前には、父親の悪い血が濃く入っているから、手遅れなんだバカでクズで、どうしようもない子なんだからわたしは、もう知らないって
そして母親は、オレを完全に無視するようになった
それまではたまにオレの前に現れては、ネチネチ小言を言ってオレを叩いたりしていたけれど
それからは空気のように扱われた
兄さんのお父さんは助けてくれなかったの
記憶がフラッシュバックする
悪いが、僕に期待するなだってさ
そうだったネ
ああ、やはりイーディは月子を通して、オレの記憶を見ていたんだ
ヨッちゃんは、まだ心に大きな穴がポッカリ空いていて独りぼっちで、寂しいんだよだから、眼の前に寂しそうな子がいると何としても幸せにしたいって思っちゃうんだよ頑張っちゃうんだよ
でも、そんなのオレが勝手にやっていることだから褒められたりすることじゃないよ大体何とかしてやりたいって思っても、オレの力じゃ何もしてあげられていないし
そんなことないよあたしはお兄ちゃんのおかげで、こうして生きているんだよっ
マナちゃんヨッちゃんはさ
寧がマナを見る
ヨッちゃんの理想はマナちゃんが、ヨッちゃんが居なくても、幸せでいられる世界なんだよ
なんでマナはお兄ちゃんが側に居るから幸せなのに
でも、ヨッちゃんはヨッちゃんの頭の中の理想の世界には、ヨッちゃん自身が居ないんだよだからヨッちゃんが、頑張らなきゃいけない世界は、ヨッちゃんにとってはまだまだ不完全な中途半端な世界なんだ