木下さんが、相変わらずのニコニコ顔でイワサキ・ヒロミにそう言う
ふざけんなっこれを見なよっ
ゆっくりと廊下に出て来るイワサキ・ヒロミ
その胸には隣の部屋に居たオトコのヤクザしと同じ
ダイナマイトを巻いたベストを着ている
半裸の少女を抱きかかえていた
そ、園子
天童乙女が呆然となる
少女は、何度も激しく犯されていたことが明白だった
下半身には何も身に付けておらず髪はぐしゃぐしゃで、心が喪失してしまったかのような呆けた表情をしていた
眼にも生気がない
10メートルは離れているオレたちのところまでぷーんと、汗と精液の匂いが漂ってきた
ヒロミさんあんた、園子に何をしたんだぁっ
天童乙女が叫ぶが
このまま、みんなで爆死するっていう可能性もあったんだオトコたちが最後にイッパツってヤりまくったのさ仕方ないだろ
イワサキ・ヒロミは言う
あんたがいけないなんだよ乙女っあんたが予定通りに香月の屋敷の中で死んでいたら、こんなことにはならなかったんだっ
こいつらの最初の計画では天童乙女が香月家のパーティの途中で変死することで、スキャンダルに陥れるということだった
それが上手くいかないのなら全員で派手に爆死してそれを香月家のせいだという話しにして、スキャンダルに発展させることになっていたのか
とにかく何らかの成果を得ないことには、関西の組織の親分たちに対してメンツが立たない
ミナホ姉さんがヨミを関西へ連れて行くという、別の成果を提案したのは追い込まれたこいつらが無茶なことをしないようにか
こっちに来るんじゃないよっこの子がどうなってもいいのかいっ
イワサキ・ヒロミは意識が朦朧としている半裸の園子さんの首筋に、右手でナイフを突き付けていた
左手には自爆ジャケットの起爆装置のスイッチを握っている
さっきの変な技を使ってもあたしは前に倒れるからねっ倒れた拍子にスイッチは押されるし、この子は死ぬよっ
それ以前に心月を受けた瞬間に、筋肉が強く収縮してしまう恐れがあります
この状況では美智の心月は使えない
しかしそれ以前に
このオバサン死ぬ気だったら、とっくに起爆スイッチを押しているよな
つまり、死ぬ気は無い
今、こんな風に人質を取ってみたけれど
この先、どうするかについては、ノープランなんだ
ひ、ヒロミさんあ、あたしはどうなってもいいからそ、園子は、園子のことは放してやってくれよっ
天童乙女が、オバサン・ヤクザに叫ぶ
冗談じゃないよっ、乙女っ親をバカにしやがって
親
あんたみたいな親を裏切る様な子は、いらないんだよっ
マズい感情が高ぶりすぎている
このままだと、突発的に、起爆装置のスイッチを押したり園子さんの首筋を切り裂いたりしてしまうかもしれない
不意に、木下さんがとぼけた声を出す
お話中のところ失礼致しますがこっちから見てて、アレレって感じたんですけれどぉぉ
人に親切をする時のように
木下さんは、ニッコリと笑って言う
その起爆スイッチコードが爆発物に繋がってないですよ
あ、ホントだ線が繋がってないや
ああ、そうですねそれでは爆発しないですよ
アーデルハイトさんまで
少し離れたロビーから俯瞰して見ている3人が揃って同じことを言う
繋がってないう、嘘だろっ
イワサキ・ヒロミは自分の左手のスイッチから、自爆ジャケットに繋がるコードを眼で確認する
左手を大きく上にあげて自分の脇の下を覗き込む感じで
そして、ギュッとする
ああああっ、ホントに繋がってないじゃないかっっ
コードの端っこはプラプラ宙に揺れていた
動けなかったはずのイーディがババッと飛び起きるっ
何だいっ
イワサキ・ヒロミがイーディを意識した時には美智の赤いムチが、彼女の手のナイフを弾き飛ばしていた
BAWOO
そのまま、イーディの跳び蹴り一発
ギャウッ
イワサキ・ヒロミは、失神するッ
そ、園子ッッ
急いで、彼女の方へ走る天童乙女
もう、大丈夫だよっ園子ぉぉっ
イワサキ・ヒロミから園子さんを引き剥がし、抱き締める
園子あたしだ乙女だよっ園子ぉぉ
必死に園子さんに話し掛ける
おおとめ
ようやく、園子さんは天童乙女を認識する
ああ判るかいあたしだよもう大丈夫だから
し、シゲヨは
シゲヨさんは園子さんと一緒に、ヤクザたちに犯されていたもう1人の女の子の名前だ
コッチの部屋に居るネアア、このコも酷いことになっているヨ
イーディが奥の部屋を確認してそう言う
デモ、大丈夫精神的にダメージを受けているダケで死んではいないネ
シゲヨも大丈夫だよ園子
天童乙女がギュッと園子さんを抱き締める
イーディが、オレに声を掛ける
ヨッちゃんほら
寧がロビーから、オレを手招きする
すぅぅ、はぁぁ
美智が深く呼吸を整えている
オレは、急いでロビーへと戻る
木下さん、もう一発来ますから
アーちゃんもさっきと同じ感じで耐えてねっ
オレと寧は身を屈めて眼と耳を強く塞ぐ
木下さんとアーデルハイトさんも、オレたちに習ったようだ
オトメゴメンネ
イーディの声の後に
心月ッッ
再び美智による気の爆弾が炸裂する
バムゥゥゥゥゥゥッ
気の爆風が吹く
眼を開けると
ああ天童乙女と園子さんも、グッタリと気を失っていた
部屋の中のコもちゃんと気絶しているネ
イーディが、シゲヨさんの様子を確認する
このまま意識があるより気絶しちゃった方が楽になれるからねここから移動させるのも、この方が楽だし
寧がそう言いながら、通信機を取り出す
作戦終了全部終わりっ、問題無しミナホお姉ちゃん、こっちに来て
イーディと美智が、園子さんを抱き締めたまま気絶している天童乙女とイワサキ・ヒロミを見ている
この2人
ソウネ
そこへ、トコトコと木下さんが入って行き
はい多分親子なんだと思いますぅ
親子
天童乙女とイワサキ・ヒロミが
オレとアーデルハイトさんも天童乙女たちが倒れている廊下へ向かう
寧はロビーのガラス・ドアのカーテンを開けてミナホ姉さんたちが来るのを待っている
ホントの血の繋がった親子じゃなくて義理の親子なんでしょうけど
いや、でもイワサキ・ヒロミって同性愛なんじゃなかったか
それで天童乙女とも、同性愛の関係にあったはずだ
両方イケルクチだったんだと思いますよぉほらあっちに倒れている天童貞男さんとと深い関係だったみたいですぅ香月セキュリティ・サービスの関西支部から届いた調査レポートに、そう書いてありましたからいわゆる内縁の妻みたいな感じなんだと思いますぅ