当時としては、違和感があったのですけれど
携帯電話を普通の大学生でも使うようになったのは、1996年~97年辺りです
自分も買ったから、よく覚えています
その段階でも、中学生に携帯を与えている親は、そんなにいなかったと思います
今では、当たり前ですからなかなか先見の明があったのだなあと思います でも、シンジくんが聞いているのはDATテープなんですけれど
デジタル・オーディオ・テープ
新劇場版では、父親が若い頃に使っていたものということになったらしいですが
909.夜は楽し / 加入希望
わたくし、桃子お姉様のご命令でこちらに居残りさせていただいて本当に良かったと思いますわ
和やかな夕食の席で
鳥居まり子さんが、みすずたちにそう言う
アーデルハイトさんはああ、レイちゃんや翔姉ちゃんと話しながら食事をしている
うん、今のアーデルハイトさんはプロの警護人であるあの2人でないと、ちゃんと相談はできないと思う
数歳年上の美智やイーディには、反発もあるだろうから素直に相談したりはできないだろうし
その点、翔姉ちゃんたちは大人だから
翔姉ちゃんが、わざわざオレたちを出迎えに来てくれたのもアーデルハイトさんのことが心配だったからだろう
つまり、翔姉ちゃんはアーデルハイトさんの採用に前向きなんだ
他の警護役安城姉妹には、ろくに声を掛けなかったし
天童乙女のことは、無視している
あら、どうしてですの
瑠璃子が、にこやかに鳥居さんに尋ねる
ジッちゃんはニヤニヤして、娘たちの会話を聞いている
わたくし、パーティの席では怒らないで下さいませ香月様たちは、どうしてこんなに余裕の無い方たちなんだろうと不思議に思っていたんですわわたくしは桃子お姉様の大らかなお振る舞いをよく存じ上げておりましたから
歌晏桃子さん桃子姉ちゃんは、香月家と並ぶ大名家、歌晏家の令嬢だ
自信家で何か、物凄く余裕たっぷりな人だった
怖い物知らずというか
鳥居さんは、そんな桃子姉ちゃんに妹分として可愛がられている
でも、それは家風の違いなのですね
あちらの可愛い皆さんを見れば一目瞭然ですわ
鳥居さんは、食卓のテーブルの角の方に固まって座っているアニエスや真緒ちゃんたち、年少組の子たちを見る
お風呂場でも、その後のお部屋でもあの子たち、大きな声で騒ぎ廻ったり、暴れたり、我が儘なことを言ったりは一切しませんでしたわホントに、ビックリしています何て、大人しい子たちなんでしょう
えいつもアニエスを中心に、楽しそうに遊んでいたと思うけれど
つい尋ねてしまった
ええ、いつもにこやかで楽しそうな笑顔をしていらっしゃいますわでも
鳥居家の親戚にも、小さな子供たちがおりますしお正月には、一族全員が集まるようなこともありますわいつも、大変な大騒ぎになります男の子でも女の子でも、あんな風に落ち着いてジッと椅子に座っていたりはしませんわ泣いたり、喚いたり、ケンカしたりオレンジジュースが欲しいとかニンジンは食べたくないとか、大きな声で騒いでいつも、困っていますの
普通の子供たちはもっと、大騒ぎしている
そういう視点で、アニエスたちを見たことはなかったな
やっぱり、鳥居の家は庶民からのし上がったばかりだからなのでしょうかだから、子供たちの躾がなっていないのでしょうか
広いお風呂なんて連れて行ったら多分、みんなで飛び込んだり、お湯を掛け合ったりして大人にイタズラをしたりもしますわメチャクチャになると思いますの
それはうちは、みんな女の子だからじゃないのかな
いいえ、小さい時は男の子も女の子も関係無いですわわたくしの従姉妹には、とんでもない悪戯っ子の女の子が何人もいますわ
オレは親戚付き合いというものを全然してきていないから
そういうのは、よく判らない
大人が真面目な話をしている時でも、平気で邪魔をしに来ますしほんと、自分勝手で我が儘なんですのよ
そう言う鳥居さんに、ジッちゃんは
君も小さい頃は、そういう少女だったのではないかね
鳥居さんはポッと頬を赤らめて
そうですわねそうだったかもしれません
今だって、これだけフリーダムなんだから子供の頃は、もっと
だから思ったんです香月様のお宅では、小さな頃から人に迷惑を掛けない、大きな声で騒がない、大人の邪魔をしないなど小さな子供にきちんとした躾をなさっているんですわねですからみすず様や瑠璃子様は、いつもとっても真剣で、真面目な態度でいらっしゃるんだと思ったんです余裕が無いのではなく、そういう教育を受けてこられたからなんだと理解致しました
確かに、桃子姉ちゃんの余裕たっぷりの大らかさに対して
みすずや瑠璃子は、いつも真面目過ぎる印象があるのかもしれないけれど
君は幾つかの点で勘違いをしておるよ
ジッちゃんが、口を開く
どういうことでございます
聞き返す、鳥居さん
まず香月家にも、困った子供たちはたくさんおるそれも幼稚園児なら我慢も出来るが、高校生や大学生になってなお、躾のなっておらん連中が何人もおる
ああジッちゃんの私塾の連中の中にも
困った性格のやつが何人もいるもんなあ
名家のというより、金持ちの家に生まれた子供を躾けるというのは、なかなか難しいことだと思うよ金に余裕があると、ついつい子供たちを甘やかして育ててしまうからな子供に愛情を注ぐことと、金を惜しみなく与えることの区別のできない親もいるそうして甘やかされて育った子が親になり、今度は自分の子を甘やかすそういう悪い連鎖が起きておるよ私など一族の中の50を過ぎた男のだらしない態度について、その親の70過ぎの老人にお前の息子の躾がなっておらんと苦言を呈すこともある
ジッちゃんは82歳だから
70歳の人を叱るんだ
香月家も子供の躾けについては、鳥居家と変わらないと
ああ、変わらんよそういうことはな
鳥居さんを、ジッちゃんはギロッと見る
しかし、名家でも本家のしかも家の跡継ぎとなるような人間は違う生まれた時からの注目と期待周囲から受けるプレッシャーが圧倒的にな
いつも色んな人から見られているから恥ずかしいことはできなくなる
周囲の人たちの期待に応えようと
真面目で、公明正大な人間だと言う評判を得ないと家の結束を損なうこともあるお家騒動などということになれば、家が没落することになるかもしれんなかなか難しいのだよ特に、日本人は上に立つ人間に対しては点数が辛いからな
ジッちゃんの話を鳥居さんは、ジッと聞いている
歌晏の孫娘が桃子くんだったな彼女が、あんなに鷹揚な性格でいられるのは本家の娘であっても、当主の後継者ではないからだよ