ああ家の跡継ぎになる男の兄弟が居るんだっけ
確か、男の子の方は真面目で、実直な性格だと聞いている
香月家だって瑠璃子の夫を狙っていた、香月操とかは真面目な性格だった
よほどラッキーなことでも起こらない限り、自分が後継者に選ばれるはずがないことを判っている香月仁とかは、テキトーな性格だったし
環境がというより、状況が人の性格を形成するということは、よくあることだ
ジッちゃんは、みすずと瑠璃子を見た
みすずと瑠璃子は同じ世代に嫡男となる子供がいなかったら、女の身でありながら子供の頃から香月家本家の後継者として育てられただから、実直な君から見れば、余裕の無い性格になったというだけだ
いえ、あの失礼を致しました
慌てて頭を下げる鳥居さん
いや、別に構わんよ世間から大らかだ、余裕がある、鷹揚だと言われるより真面目で、公明正大で、実直だと言われる方が何倍も良いみすずたちにとってはな
逆に美子は、この間まで瑠璃子のお付きとして暮らしてきたからな使用人的な性格がなかなか抜けないようだな
美子さんが、祖父に頭を下げる
いや、それはいいのだよほどのことが無い限り美子が、香月家の後継者となることはないのだから
みすずと瑠璃子が行方不明になるとか、死ぬとかしない限りは
美子さんは、ジッちゃんの3人の孫娘の中では一番年上だけれどジッちゃんの亡くなった長男の隠し子であって、正妻の娘ではない
それに、みすずや瑠璃子には一族の中で後押しする勢力がすでにできているけれど急に孫娘と認知された美子さんには、そういう後援者はいない
というか、美子さんはお付きとして、子供の頃から、ずっと瑠璃子と一緒に暮らしてきたのだから
瑠璃子との関係を断ち切って、自ら後継者候補に名乗りを上げるとは誰も思っていない
しかし、一族に甘い顔を見せて、馬鹿なやつを勘違いさせてはならんぞ
一か八かの逆転を狙って、美子さんを担ぎ出そうとする人間を出さない様に
今は近寄って来る者には気を付けろ少しでも怪しいと思った相手とは、交際するな
はい、お祖父様のおっしゃる通りに致します
美子さんは、恭しくジッちゃんに答える
さて、ところでさっき、君の言っていた向こうの幼い子たちのことだが
ジッちゃんは、鳥居さんにアニエスたちを示す
あの子たちの躾ができているのは香月家とは関係が無いあの子らは、黒森家の子だからな
香月様のご意志で躾けていらっしゃるのではないのですか
黒森の家は名家ではないのだから鳥居さんの考え方なら、鳥居家の子供たちよりも
もっとハチャメチャでないといけない
というかうちは別に、躾とかしていないわよね
克子姉が、苦笑して言う
真緒ちゃんもアニエスちゃんも何も言わなくても、あたしたちを困らせるようなことはしないしお手伝いも進んでしてくれるし
うんうちはみんなそうだよねっ誰も我が儘なこと絶対に言わないし
親の背中を見て育っているからだよ
渚くんは自分の花屋を軌道に乗せるまで、随分、苦労したからねそうだろ
真緒ちゃんに、そう言う
うんママはいつも頑張ってて、お疲れさんだから真緒は、頑張れ頑張れって応援してあげないといけないのっだから、我が儘なことはダメママが寝ている時は、静かに起きる時間になったら、優しく起こしてあげるのっ
そんなことを思っていたんだ
でも、今はパパがいるから前より、ずっとママは元気っ真緒も元気みんないるし、楽しいし
でも、騒いじゃダメですのちゃんとパパたちの迷惑にならないように、周りをよく見ていないといけませんのアニエスたちのせいで、パパが他の人に怒られたりしたら可哀相ですから
アニエス真緒ちゃん
アニエスは、ヨッちゃんの背中を見て成長しているんだねっ
あら、アニエスさんだけではありませんわわたくしもお兄様の背中を見つめてお兄様が恥ずかしくない娘であるように心がけております
あたしもそうですお祖父様には申し訳ないんですけれど香月家のために頑張るということでしたら、あたし、もう限界だったと思いますでも旦那様のためならどんなことでも耐えられますし、幾らでも頑張れますわ
ていうかさ、お兄ちゃんのためっていうよりお兄ちゃんの真似をしているんだよアニエスちゃんたちは、あたしもそうだけど
だってお兄ちゃんは、いつも、あたしたちに対して誠実に接してくれてて、嘘吐かなくて、真面目で
そうですわね今日のパーティでも旦那様は、ずっと控え目にしていて下さって
そうね他の男の子ならもっと、自己アピールしたり、大騒ぎしたりしているわよね
マナみすず克子姉
わざと他の名家のお嬢さんたちの前でさミィちゃんに、オレに水を持ってこーいとか命令するとかさ
いや、ヤッちゃん何でオレが、そんなことを
だって天下の香月家のお嬢様のパートナーになったんだから、普通はそれぐらいの増長はするよっおい、みすず酒だ、酒だ、酒を持ってこーいとかそれがどうした、文句があっかーとか
それじゃあバカ男だ
逆にあんな女の子だけのパーティだったんですから、恥ずかしがられてお顔をお見せにならないものですわ
鳥居さんが、オレに微笑む
それなのに黒森様は、パーティの間、ずっとみすず様に付き添っていらっしゃいましたから
ああ、何か言われたな
パーティに来たお嬢様たちに
オレが大人しい男で良かったみたいなことを
そっか、普通の男は自己主張してアピールしまくるか
恥ずかしがって、隠れているのか
でもみすずたちだけにしておくわけにはいかないから
今日のパーティだって、色んなコトがあったんだし
危ないことが起きた時に、ちゃんとオレが守れる位置にいないとさ
本当に、変わっていらっしゃいますのねわたくしの周りには、そういう考え方をなさる男の方は1人もおりませんわ
鳥居さんが、オレに言う
Darlingはライオンなのネ
アタシたち家族という群れの中心に居る一匹のオス・ライオンなのネいつも、群れ全体に危険がないように、アタシたちを見ていてくれるノネアタシやミチは敵と闘う闘士ダケレド闘う相手は何ナノカを見極めてクレルのは、Darlingなのネ
家族の要でございますから
うん結局ヨッちゃん、なんだよねヨッちやんは、ほら絶対に、相手をナメてかからない人だからどんな時でも、真っ直ぐに相手を見てどう対処するか考える人だし楽観的にはならないんだよね今の幸福も一つの間違いで崩壊してしまうような、危ういものでしかないということを身にしみて感じているから