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ミタマお姉様

キヌカ、これは大変な盲点であった

姉妹は、慌てて弁当箱を開く

美里お嬢様安城ミタマ、弁当を使わせていただきまするっ

ありすお嬢様安城キヌカ、弁当を使います

弁当を使う

昔の日本語では弁当を食べるということを弁当を使うと表現シタノネ

それを来日数ヶ月のアメリカ娘に教えてもらうオレの立場は

美里お嬢様と同じお弁当だそうでございます

ありすお嬢様失礼ながら、同じ内容のお弁当を食させていただきます

姉妹は部屋の中、ドアの向こうに叫ぶ

ああ、この卵焼きの何と甘きこと

塩鮭の塩辛さも最適でございます

美里お嬢様もどうか、お食事になって下さいませ

ありすお嬢様もキヌカとお食事致しましょう

うーむ、このタクアンコリコリと良い歯応えにございます

コロッケですよありすお嬢様コロッケの中身は、クリームコロッケでございましたっ

行きましょう

ソウネ後は、ショウに任せておくネ

翔姉ちゃんが、こんなに一生懸命な姉妹を見捨てることはないか

部屋の中のお嬢様たちのことはミナホお姉ちゃんが帰って来ないことには、どうすることもできないもんね

鞍馬美里さんを娼婦にするというのはミナホ姉さんが担当の仕事だ

今は天童貞男たちの方に行っているからここに戻って来るまでは、鞍馬姉妹の件の進展は無い

ハイジさんもオレにそう言った

オレたちは、部屋のドアの前で弁当の内容について感想を叫び続けている安城姉妹を置いて、廊下をさらに進んで行く

名家の警護役の家に生まれて子供の頃から、ずっとお嬢様たちに付いてきたのですものね

レイちゃんが感慨深く、そう言う

簡単に主従関係は捨てられないそういう人生なんだよっ

ちょっと、うらやましくも感じます

ハイジさん

うらやましがることはないネハイジもこれからは、ずーっとウチの子なのネ

そうそうもう、ずーっと一緒だからねっハァちゃん

人のことをうらやんでいる余裕は無いわよ

イーディ、寧、レイちゃんが順々にそう言った

は、はいそうですね

ハイジさんも、自分に言い聞かせるようにそう言う

はーい、こっちよ乗って

屋敷の裏から出て、駐車場へ

レイちゃんは、香月セキュリティ・サービスの社用車の黒いバンにオレたちを連れて行った

これなら目立たないで、香月セキュリティ・サービスの旧館へ行ける

レイちゃんが、運転席

イーディが、助手席

オレと寧とハイジさんは後ろの席に座る

ハイジさん、後方監視

はい、麗華お姉様

ハイジさんも警護のA級ライセンスを持っている子だからすぐに順応した

鳥居さんのことだけではないんだ

ハイジさんも、あのままみんなと居るより現場に連れだした方が、良かったんだ

この子のプライドはプロの警護役であることなのだから

現場の中に居た方が、活き活きとしている

はい、シートベルトしましたね行きます

レイちゃんが、車を始動させる

香月家の敷地から出るところで、香月セキュリティ・サービスの制服警護員のチェックを受けるが

レイちゃんが運転する車だから、問題無く外に出られる

旧館までは、2分も掛かりませんから

その旧施設というのは、この香月家本家邸宅を警護する香月セキュリティ・サービスの前の本部があったところだから

邸宅の正門のすぐ近くにあるらしい

しかし、ここの本家邸宅はとにかく広いから

今出た裏口から、ぐるっと邸宅の周りを廻っていくのに時間が掛かる

正門から出ればすぐなんですけれど

正門は今は使えませんから

正門から出入りするのはジッちゃんやみすずたち、本家の人間たちだけだ

今日来たお客様たちにはお客様専用の門がある

使用人である香月セキュリティ・サービスの人間は、裏門など他の門を使わないといけない

香月セキュリティ・サービスのスタッフ用の社用車が1台だけで出立するのなら裏口からでないとおかしい

ところでさっハァちゃんはどうして、あたしたちの家族になるって決心したのっ

寧が、笑顔で尋ねる

ここでもう一度、ハイジさんに自分の決心を思い返させることで

浮き足立つ精神を、安定させようとしているんだと思った

それは色々と理由はあったのですが一番は、藤宮さんのいえ、麗華お姉様のお話を聞いたからです

後方の監視を続けながら、ハイジさんは答える

あらわたくし、何を言ったっけ

ルームミラー越しに、クスッと微笑むレイちゃんが見えた

あのわたくしは何と言いますか今までの人生で色々とありましたので自分は一生結婚することもなければ、子供を産むこともないとそう思っていたのです

ハイジさんは言う

わたくしのように娘が母になるなどということは、生まれてくる子に申し訳がないというか1人で育てるのは無理だと思いましたいえ、生まれてしまえば、子は勝手に育つということはわたくし自身が一番良く知っているのですが

ハイジさんは、売春窟の生まれで孤児だ

でも、子供を幸せにわたくしでは、幸せな子供に育てることができないと思いました幸せにできないのなら生む資格はないそう思い込んでおりました

ああ、その話ですね

わたくしも前は、全然、恋をする気も、子供を生む気もありませんでしたから一番トンガって英国紳士の男装をしていた頃ですね

レイちゃんは、今も男装だけど香月セキュリティ・サービスの制服をベースにしたものになっている

デザイン化されたものだからカッコ良いし、凛々しいけれど

前の徹底した英国ダンディの男装みたいなマニアックな感じは無い

でも、ほら今は家族がたくさんいますからお姉様たちも妹たちも子供を産むことが全然怖くないんですみんなで育てみんなで愛してもらえることが判っていますから

実際渚の娘である真緒ちゃんを、みんなで可愛がっている

来年には、渚と雪乃がオレの子を産むことも決まっている

月子も妊娠したがっている

判らないことは教えてもらえるし助けが必要な人には、みんなでサポートするこの家族の中で、自分の子も他の人の子も、みんなで一緒に育てていくのは、とっても楽しいと思うわってハイジさんに話したんです

そうだよねっあたしも全然怖くないもんっみんなで助け合っていくのは判ってるからさ

それでハァちゃんは、家族に入るって決めたんだ

ハイジさんは

誰も大声で怒鳴って怒ったり、叱ったりする人がいないんです

厳しいお話をなさる時でもみんな、笑顔のままで

ああ、そうだねうちは基本的にそうだよね

そして年上の方たちも、小さな子たちも自分が何をするべきなのかを、ちゃんと心得ていて他の人の迷惑にはならないようにしていますし