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じゃあ、行くよーっミナホお姉ちゃん本番、10秒前からでいい

椅子に座ったミナホ姉さんが重々しい感じの表情を作る

はーい、10秒前8、7、6、5、4、3、2、1キュー

寧のカメラのランプが赤く点灯する

こんばんは皆さん、お加減はいかがかしら

カメラに向かって、ミナホ姉さんが微笑む

ああ、3つのモニターの中の一番右猪鹿蝶一郎たちの部屋で

部屋の中のテレビに、ミナホ姉さんの姿が映っている

音声拾いまーす

木下さんが、猪鹿蝶一郎たちの部屋の音声をスピーカーから流してくれた

突然、点いたテレビモニターから話し掛けて来る怪しい女

ざわつく拘禁室の中で、とりわけ厳めしい顔をしたヤクザがギロッと睨む

なんなんじゃ、おめぇは

ああ、こいつがボスの猪鹿蝶一郎なのか

あたしは、黒森御名穂そういえば、お判りですよね

ミナホ姉さんの言葉に、その男は

そんなやつは知らねえなアンタじゃ話にならねぇもっと上の人間を呼んできやがれっ

上の人間翔姉ちゃんや、谷沢チーフ

あるいは、香月家の当主であるジッちゃん本人か

ワシらはのぉ、おめぇみたいな小娘とは交渉なんざしねぇんだよ

男は、最初っからカマしてくる

あたしも猪鹿蝶一郎本人としか、お話するつもりはありませんわ

ええっと、あなたはタドコロさんかしらごめんなさい、香月セキュリティ・サービスからもらって来た資料には、あなたみたいな下っ端のヤクザのことまでは詳しく書いてなかったのよ香月セキュリティ・サービスの関さんとか藤宮さんたちなら今、その部屋にいる皆さん全員の顔と名前を把握ているんでしょうけれど

わざと自分は、香月セキュリティ・サービスとは関係が薄いように伝える

アニキ

ミナホ姉さんと話をしていたヤクザが、別のヤクザを見る

しゃあねぇなワシが猪鹿蝶一郎じゃ

猪鹿蝶一郎はすごく小柄で、痩せた男だった

はじめましてといっても、これが最初で最後になると思いますけれど

どういうこったアンタ、何が狙いだアンタは香月のところのヤツラとは別に動いているのか

猪鹿蝶一郎は、尋ねる

お答えするつもりはありませんわその必要もないでしょうし

だったら、ワシも何も答えんからな

猪鹿蝶一郎は、虚勢を張る

アンタはどうせ香月に雇われて、ワシから関西の情報を聞き出そうとしておるんじゃろわかっとるぞワシの眼は、フシアナじゃあないからな

あら、あたしの仕事はあなたたちの処分だけよ尋問とか情報収集とかそんなこと、あたしにできるはずがないでしょ

絶句する、猪鹿蝶一郎

あなたあたしが、誰だか判っているの

オメェはあの関東の金持ち相手の売春宿を経営しているネーチャンだろそれぐらいは、ワシだって知ってるわ

ああ、大声で喚きだした

ミナホ姉さんのプレッシャーが効いている

ああ、それしか知らないのね

ミナホ姉さんは、ケロッと言う

あたしは裏社会の女よだから、非合法なことでも、お金になることは何でもするわ

何でもするっておい

だから言ったでしょあたしが、香月家から請け負ったのは、香月セキュリティ・サービスにはできないケガレ仕事よつまりあなたたちを処理するという

ミナホ姉さんの微笑みに猪鹿蝶一郎たちは、ゾッとする

あなたたちだって鷹倉神社の巫女のことは聞いて来ているでしょ人の心を読む人間を相手にするのにあなたたちに関西の親分さんたちが、大切な情報なんて話すはずがないでしょむしろ、わざと嘘の情報を教えて、香月家を攪乱しようとしているのに決まっているわ

ニヤニヤと微笑みながら、ミナホ姉さんはそう言う

だから香月家は、あなたたち存在に価値を認めていないわけ尋問とかしたって、時間のムダだからさっさと裏の世界で処理しろって、あたしに引き渡したのよ

ちょっちょっと待て、オメェ

さて、あなたたちどんな風にして死にたいこれだけたくさんの人数となると骨も残さずに消滅させるのは、なかなか難しいんだけど

だから、待てってこらっ

今コンクリート・ミキサー車の手配をしているから、もう少し待っててね

顔が硬直する猪鹿蝶一郎

コンクリートミキサーってオメェ

あらガタガタ抜かしたら、コンクリで固めて海の底に沈めるぞっていうのが、ヤクザさんたちの定番でしょ

ミナホ姉さんは、また笑う

できることなら、皆さんの地元の大阪湾に沈めてあげたかったけれどあたしは、そっちに知り合いがいないから東京湾で我慢してねちょうど埋め立て工事をやっているところがあるから大きな建物の基礎部分に、埋め込んであげるわそうね3000年ぐらい経ったら、21世紀の東京の遺跡として、あなたたちの遺体も発見されるかもしれないわね21世紀の日本では、まだ建築物を建てる時に神に人柱を捧げていた証拠として研究されるかもしれないわよ

おいっ、こらぁっ

じゃあ、そこで大人しく待っててあ、そうだあなたたち、何か欲しいものあるお茶とお饅頭とか

お茶とお饅頭は欲しいかって聞いているのよ

猪鹿蝶一郎は、ちょっと考えて手下たちの顔を見る

手下たちは、みんな困惑したままで

そ、そりゃあ喉はカラからだし、何か食えるものがありゃあ、饅頭でも良いととは思うが

毒が入っているけれどそれでもいいかしら

ミナホ姉さんは、さらりとそう言った

ど、毒

そうよ毒入りのお茶とお饅頭その方が簡単でしょ、あなたたちを殺すのには

て、テメェ正気かワシらはヤクザだぞっ

知っているわよでも、あたしも裏社会のオンナですから一々、ヤクザを怖がっているわけにもいかないのよ

殺すことが決まっている人たちに、普通の食べ物や飲み物を与えるわけがないでしょあなた、今晩のおかずになる魚に餌をやる

毒ガスと毒薬なら毒薬の方が安く済むから、できれば毒薬の方で済ませたいのよ

ど、毒ガス

毒ガスだと使ったあとのお部屋の掃除も面倒だしほら、そこのお部屋の壁とか黄色く変色しちゃってるでしょ

おおいっ

ヤクザたちは、慌てて部屋の中を見渡す

あ、アニキあの辺から、毒ガスとかシュボーッて流れてきそうですぜ

いや、ここの小さな穴とか怪しいと思いますぜ

ミナホ姉さんの言葉に、みんな踊らされて行く

まあいいわ毒ガスでもあなたたちの処理の経費は、香月家に請求するからまあ、あなたたちの処理は、天童さんたちの後だからもう少し、のんびりしていて

猪鹿蝶一郎は天童の名に反応して

天童たちもここに捕まっているのかっ

それは言えないわよこの建物の中かもしれないし他の場所かもしれないあたしだって、どこか遠い場所から指示を出しているだけかもしれないわよ