そして、天童乙女たちの部屋を見て
あの中には、色んな子がいるしもちろん、よっぽどのことが無い限り、ヨッちゃんはあの子たちを切り捨てて行くしかないんだけれどさ
まだ天童乙女は３人の少女に文句を言われている
園子さんたちは、苦しそうなまま
見ているだけの子は、不安そうな表情を浮かべている
それでも、もし、ヨッちゃんがどうしても切り捨てることができない子がいてだけど、家族に受け入れるのは無理な子だったらさ
ヨッちゃんのセックス奴隷という名目なら、ミナホお姉ちゃんが引き受けてくれるって言っているんだよ最後の手段のワイルドカードとしてね
ステッペンウルフのBorn To Be Wildをワイルドで行こうという日本語タイトルに翻訳したのは誰だ
同様に、ブルース・スプリングスティーンBorn to Runを明日なき暴走というタイトルにした人も、どうかしていると思う
916．夜は楽し ／ スプライト
ほんじゃあ、行こうかっヨッちゃん、イーディ、月子さん
寧が天童乙女の部屋に行くメンバーに声を掛ける
ハイジさんが、そう言うが
アンタはダメネ
イーディが、彼女を制止した
うん今回はヨッちゃんが、どれだけクールな頭で判断することができるかが課題だからさっ
感情が高ぶっているアンタを連れて行くとDarlingが集中できないノネ
ハイジさんが一緒だとオレは、ついつい彼女のことを気にしてしまう
オレの判断でなくハイジさんが、どうするべきだと考えているかを感じて
彼女の意見に左右されてしまうかもしれない
あたしたちはヨッちゃんが決めたことに、素直に従う子たちだからさっ
アタシたちの意見を押し付けてタリはしないノネ
わたくしもお２人と同じですわ
寧、イーディ、月子
だが、それが怖い
何もかもがオレの判断に委ねられているということは重いプレッシャーだ
しかも、オレの心はずっと月子に読まれている
はいですからお心を偽らないで下さいませ
娼婦や警護役などで使えないような子なのにこの子は使えるとか言うのはダメだ
ただ可哀相だからという理由だけで、オレのセックス奴隷として飼うというのも
嘘は吐けない
ヨミでしたら、公様のお気持ちを汲んで見逃すこともあるかもしれませんがわたくしは、絶対にそのようなことは致しません
月子はオレより２つも年上だし
鷹倉神社の巫女を継ぐ決意をしてから何事もクールに見極めている
まだ１４歳のヨミなら、情に囚われることもあるだろうが月子なら、そんな甘さは無い
うーわたくしだってクールですわ
ヨミもオレの心を読んで、そう言う
あっ医療部から、検査結果が来ましたーっ
木下さんが、ノートパソコンを見てそう言う
電子メールで届いたんだな
検査結果って
ああ、天童乙女たちの
ちょっと、見せて寧とイーディさんも来て
あいよー
オーケー
ミナホ姉さんと寧とイーディが木下さんの背後から、画面を覗き込む
ていうか、何でオレは呼ばれない
まあ、呼ばれても医療関係のレポートなんて、オレには理解するのが大変なものなのかもしれないけれど
へえ、こういう結果なんだっ
あの子たちには、寧が伝えてあげなさい公にも、それまでは教えないでね
寧は、おどけて敬礼する
はい、これがこの施設の中の地図よ今、わたくしたちがいるのがここ天童乙女さんたちの部屋はここ
レイちゃんが、１枚の紙を取り出して指で示す
セキュリティの問題があるから、この地図は渡せないわよ今、ここで暗記して
任せるネ
イーディは、元は暗殺教団で暗殺者の教育を受けてきた子だから
図面をその場で暗記して、建物の内部構造を把握するような能力もある
教えてくれるのは、天童乙女たちが拘禁されている部屋だけで
親の天童貞男たちや、猪鹿蝶一郎の居場所は判らないままにしてくれている
もしもの場合そんなことが起こるとは、思えないけれど
オレらが、天童乙女たちに捕まって父親たちの囚われている部屋へ連れて行けと命じられたとしても
オレたちは天童貞男たちの居る部屋の位置を知らないのだから、どうすることもできない
そんな状況まで想定している
あなたたちの移動について、香月セキュリティ・サービスの警備員が制止したりしないようにわたくしの方から指示しておくわ
レイちゃんが、オレにそう言った
よーしそんじゃあ、改めてレッツ、ゴーだよっ
ハイジさんここで観ていてヨミ、ハイジさんのことよろしくミナホ姉さん、レイちゃんじゃあ、行ってくるよ
冷静に判断するのよ
レイちゃんとミナホ姉さんは、笑顔で送り出してくれた
いってらっしゃーい
ニコニコ顔の木下さんも
エレベーターで、数階下りて廊下を通って、今度は階段で上がる
そして、またエレベーター
ああ、この建物もシザーリオ・ヴァイオラと闘ったホテルみたいな複雑な構造になっているんだな
普段は、普通の建物だけれどボタン一つで、隔壁や防火扉が閉鎖されて、内部が立体迷路になる
元はここが、香月家本家の邸宅に一番近い警護員たちの待機所だったんだから
敵の襲撃があった時にジッちゃんやみすずたちを一時避難させておく役目も想定していたはずだ
そんでそこを曲がるネ
移動の間香月セキュリティ・サービスの警護員には、一人も会わなかった
各フロアに、誰かしら待機しているはずだけれど
監視カメラで、オレたちを移動を観ているんだと思う
レイちゃんの指示があったからスルーしてくれているんだな
しかし廊下のどこが、警護員たちの待機スペースの入り口になっているか、全く判らない
ここが今はもう使っていない旧館なら、新しい施設はもっと凄いことになっているんだろうな
で、ここなのネ
イーディは、廊下の途中のドアの前で停まる
Darlingいいネ
オレは、スゥハァと深呼吸をする
うんオーケイだ
こういう緊張感には、慣れて来ている
いや、慣れてはきたけれど
馴れてはいけない
緊張感は大事だ
イーディが先頭で、次がオレ月子とヤッちゃんは、後ろからそれと不穏な空気を感じたら、月子はすぐにみんなに教えてくれ間に合わないと思ったら、巫女の力を使っても構わない
ドアを開けた途端に
天童乙女が、襲いかかって来る可能性もある
イーディは平気だろうが
月子や寧は、危なくないように後ろに下げておいた方がいい
オッケー、ヨッちゃん
オレたちは、フォーメーションを組む
それじゃあ開けてもらおうかっ
寧が廊下の天井のカメラを見上げる