地味な子はそう言った
だってそんなのは、今までと何も変わらないじゃないですか
変わらないことはないだろっオヤジたちは、もう付いて来ないんだよっ
あのあたしにとっては、同じなんです
地味な子は眼を伏せる
お父さんたちも乙女さんも同じように怖い人たちです
あたしが怖い
だって乙女さん、いつもあたしを怖い顔で睨むじゃないですかキツイ言葉で怒鳴り付けるじゃないですかっ
地味な子は天童乙女との会話を断ち切って、オレに振り向き
あたし何でもしますっ元の生活に戻らなくていいのなら、何だってしますっとにかく、あたしっ、もう地元には戻りたくないですっ家には帰りたくないですっお父さんたちにも会いたくないし、ヤクザの居るところへは帰りたくないっ
それは深刻な心の叫びだった
あの3人とももう二度と会いたくないですっ
床に倒れている金髪、赤髪、眉無しパーマを指差す
そんでっ乙女さんとも、もう一緒に居たくないないですっ
天童乙女は唖然として、彼女の叫びを聞いている
だって、みんなっあたしのこと、イジメるからっみんなみんな、大っ嫌いっあたし、大嫌いなんです
この子はマイナスな感情を、内面にいっぱい溜め込んでいたんだな
あたしもなのかい
天童乙女は、ようやくそれだけ言葉にした
そういうところが一番嫌いっいつでも、あたしのことバカにして何も出来ない子だって、あたしのことをいつでもバカにしてるから
天童乙女の仲間たちに対する思いは空回りしていた
全然、届いていない
あたしどこでもいいから、別の世界へ行きたいんですっ今までの人あたしの周りに居た人が1人もいない世界にみんな嫌いみんなの居ないところへ生きたいっそれで今より、もっとヒドイことになってもツライ目に合ったって構わないんですっこのままでいるよりはっここではない、どこかに行きたいっっ
彼女は喚く、泣く
感情が爆発する
でも、オレには
この子をどうして良いのか判らない
本当に、何でもするの
驚いて泣き止む地味な子
聞いているのよ今までと違う生活ができるのなら、どんなことでもするかって
ししますあ、あたし何でも
あたしは黒森御名穂上流階級の裕福な男性を対象にした娼館を経営しているわ
判る売春だけれどただの売春じゃないわ相手はみんなお金持ちでそうね、あたしの顧客は年輩の方が多いわ怖いことはしないというより、あたしの娼館では女の子に暴力的な行為を求めるお客様にはご遠慮いただくから
白坂創介時代のような経営には戻さない
ヘンタイ客は、受け入れない
そうね5年間だけ、働いてみない5年後にはそうね、最低でも三千万円貯まるわよあたしのところで働いて貯めたお金を元手に自分のお店を始めたという子も何人もいるし
ホントだよっ、お花屋さんとか、美容室とか今、パン屋さんの開店準備をしている人もいるしっ
5年間だけ頑張ればその後は自由よお金持ちのお客様が、娼婦を辞めた後に始める事業の支援して下さることもあるわそれに、皆さん権力者ですからヤクザからあなたを守るわうちの娼館の子になればね
おい、待てよあたしの仲間を、娼婦なんかにさせないよっ
あたしは今、そこの子と話しているのよ彼女の人生は、彼女が決めるべきものでしょあなたが口出ししていいことじゃないのよ
あたしは、こいつの
こいつじゃないですっあたしは乙女さんの子分でも手下でもないですっあたしは、黒沢直子ですっ
地味な子はそう叫んだ
でどうしましょうか黒沢直子さん
今のままならそうね、あなたはどこかの養護施設かなんかに送られることになるわそして、またその施設には天童さんみたいなお節介過ぎる子や、そこに倒れている3人みたいなイジメっ子がいて同じことの繰り返しよあなたは、また他の人に干渉され引きずり回されることになるでしょうね
あたしのところで娼婦になればもちろん、娼婦は男に身体を売る仕事だから、厳しいわよでも、あたしの店は高級娼館お客様も一流なら、あなたたちも一流のドレスを着て、一流のオンナになるように教育してあげるわ間違いなく、今とは人生が変わるわよそれは保証するわ
この子多分ミナホのオファーを受け入れるネ
金持ち相手だとしても、娼婦は娼婦だ
黒沢さんだって、まだ処女で若いんだから
娼婦になることには、抵抗があるはずだ
この子は、ヤクザの娘ネ身の回りに身体を売っているオンナの知り合いが、いっぱいいるノネ
そこに倒れている子たちだって多分、エンコーしているだろうって話なのネ
そうだそこの3人ムスメは、さっき話していた
自分たちは、はみ出しモノのヤクザの娘だから水商売以外に進む道が無いと
あのコだってもうちょっと大きくなったら、親に売春させられるんじゃないかって、ずっと思ってたはずなのネ
つまり娼婦になるかもしれないということを考えたことがある
ソンデただの娼婦ジャナク、ヤクザも絡まない金持ち相手の仕事なら心が動くネ
すると、黒沢さんは
でも、あたしこんな顔ですよ
自分の顔を両手で触る
あたしみたいなブスをお金持ちの人が相手にしてくれるんでしょうか
あら、お金持ちの上流社会の人だからこそあなたみたいな純朴な子を求めているのよ
お、おい騙されるなよ
ちょっと黙ってて下さい今、大切な話をしているんですからっ
黒沢さんは乗り気になっている
あたしの方の条件は3つだけ本気で一生懸命にやること絶対に、あたしやお客様には嘘を吐かないこといつでも5年後に娼婦を辞めた後のことを考えて準備を始めていること
さっき話した引退後にお店を始めた人たちも現役時代から、準備や勉強を始めていたからさっ
ええ、開業するための通信講座なんかを受講するのは構わないわ娼館の営業は、基本的に夜だけだから昼間は、自分の勉強に使っていいわよ
ただお客様は、上流の方々だから、あなたのことを気に入って下されば、色々と助けていただけるけれどもし、あなたが失礼なことをした場合は、大変なことになるからね
死ぬよりも、もっと恐ろしいことを体験してもらうわもっとも、あなたがお客様やあたしにとって良い娼婦のままでいてくれるのなら、そんな心配はしなくてもいいんだけれど
アメとムチの言葉を、交互に繰り出す
で、どうする黒沢さんやってみる
できるかどうか判らないですけれど
できるわよあなたはきっと人気のある娼婦になるわあたしはそう思うから、こうして声を掛けているのよ
判らない他の子にはあたし、話し掛けていないでしょ
3人ムスメやシゲヨさんの時には
ミナホ姉さんは、介入して来ていない