今は戸惑っている桜子さんもすぐに、この集団の空気に慣れるだろう
エレベーターが来たのでオレたちは、乗り込む
イタリアンのお店は1階です
レイちゃんが、エレベーターのボタンを押す
そう言えば、ホテルのロビーの脇にあったかもしれない
フレンチや中華のお店は、最上階の1つ下のフロアなんですけれど
景色がとても良いんですよ夜は特に次の機会には、そちらにも参りましょう
今、香月家の施設では高層階のドローン対策が大変なんですよ
ドローンてあの、ラジコンのヘリコプターにカメラを付けたのが最近増えたじゃないですかあれで高層階の部屋を盗撮されないように
ああ、そうだねどういう対策をしているんだ
オレは興味を持ってレイちゃんに尋ねた
はい、ここのホテルの場合はアメリカ軍が開発したレーザー砲を、数カ所取り付ける予定です
れ、レーザー
あ、この間、テレビのニュースで観たわアメリカの軍艦が、海賊退治とかに使うやつでしょ
まり子が興味を持って、話に加わる
はい、それと同じものですそのレーザー砲で、こちらのホテルの敷地内に飛来したドローンは、問答無用で撃墜することになっていますセンサーで感知した瞬間に、ボワッと一瞬で撃ち抜きます
う、うんここはジッちゃんが、政財界の大物たちと密談したりもするホテルだから
し、しかし
そういうことをして大丈夫なんですの
まり子がレイちゃんに尋ねるが
大丈夫も何も個人所有のホテルに、レーザー砲を付けてはいけないというような法律は、まだありませんから
そりゃあまだ無いよな
そんな話をしているうちにエレベーターが1階のフロアに到着する
さショーの開始よっ
まり子がチアガールたちに声を掛けた
ホールの方で、チアガールの大会とかやっているのかもしれないね
みんな可愛いなあ
大人ぽい子が多いけれど高校生だよなぁ
レイちゃんを先頭にホテルの1階ロビーを抜けて行く、チアガールの一団
レイちゃん、まり子、瑠璃子、美里、桜子さん桜子さんにぴったりと張り付いている不知火さんオレと克子姉に最後尾が美智だ
みんな足が綺麗だな
足だけじゃないだろ
わぁ、スタイル良い子ばっかりね
モデル事務所の子なんじゃないの
うわ、ママ綺麗な人たちだよ
ホントに綺麗なお姉さんたちだわね
ホテルロビーには、たくさんのお客さんが居た
フロントでチェックインしている人ソファに座って談笑している人人を待っている人家族連れさらにホテルの職員たち
みんな、チアガールたちの華やかさに眼を奪われる
ああ、レイちゃんはわざと人の多いところを通って、イタリアン・レストランへと向かっているんだな
恥ずかしそうに歩いているのは、桜子さんと不知火さんたちだけ
瑠璃子もまり子も美里も朗らかに微笑んで、品良く歩いている
ザッツ・ダンシングっていう、アメリカの映画の中のダンスシーンの名場面を集めた作品があるんだけれどね
その映画の中でエレノア・パウエルっていう昔のスターが、ビキニの水着姿で踊る場面が収録されているのよ
ビキニの水着でダンス
戦前のダンスシーンだから、モラル的にも色々とうるさかったはずだしミュージカル映画だから、お父さんが子供を連れて観に来ることもあるでしょそれでエレノア・パウエルのダンスはもちろん、ビキニしか着ていないんだから健康的なお色気たっぷりなのよでも顔は、とってもニコニコと明るく清らかな微笑みを崩さないのよね
だからセクシーなんだけれど、少しもいやらしくないのよいや、もちろんいやらしい眼で見たら、エッチなんだろうけれどお父さんが子供と一緒に観ても問題のないダンスなのよエレノア・パウエルの表情と雰囲気がそういう風に場をコントロールしているのよね
そう言って、克子姉は瑠璃子たちを見る
今のあの子たちもそう表情と雰囲気で、周りを制しているわ
ああ、みんな瑠璃子たちに注目するけれど
悪い印象は、一切与えていない
綺麗な少女たちが、お揃いのチアガールの格好で歩いているという風にしか、感じていないから
普通に可愛いとか綺麗とか、話している
扇情的なだけの集団なら周りを眼を気にして、みんな見ないし話題にしないわ
ジロジロ見ていると自分の方がエロい人間だと思われるから
こういうことができちゃうのは生まれついてのお嬢様たちの強さよね
瑠璃子もまり子も名家・鞍馬家の令嬢だった美里だって
人に注目されることに慣れている
というかそういう視線の中でしか、生きられない世界で育った
何を着ていようと、どこにいようとこの子たちは常にお嬢様なのよ
はい、こちらのお店です
レイちゃんがようやく、オレたちをイタリアン・レストランの前に連れて来た
レストランの前には、すでに制服姿のお店のマネージャーさんらしい男性が待っていた
レイちゃんからの連絡で、香月家のお嬢様たちが来るのだからそういう準備もする
いらっしゃいませこちらへどうぞ
レイちゃんの顔だけ見て店員さんは一礼して、オレたちを店の奥に招く
昼時だから、レストランの中にもたくさんのお客さんたちが居た
もちろん、みんな突然現れたチアガールの集団に注目する
たくさんの視線を集めたままオレたちは店の一番奥の個室に誘導された
ここも閣下の専用室です
ということは部屋の中は完全防音で、携帯などの電波も遮断されている
監視カメラも無し
室内の会話は一切、外に漏れないし中で何をしようと、誰にも知られないで済む
ホテルの全てのレストランにお祖父様が会談なさるための特別室が設けてあるんです
お祖父様は、あまりイタリアンはお食べになられませんがお祖父様がお会いになられる方が、イタリアンを好まれる場合がございますから
なるほどそして、この特別室は、いつジッちゃんが来てもいいように常に準備されているんだろう
だから、レイちゃんの内線電話での連絡だけですぐにオレたちに使用させることができる
では入りましょう
瑠璃子が特別室のドアを開けると
あらあら、みんなお揃いで可愛いわねっ
部屋の中から、聞いたことのある声がした
ああ、レイちゃんがわざと遠回りしたのは
この人たちは、先に特別室に到着させるためだったんだ
早く入りなさいわたくし、お腹が減っているのよ早く、みんなでお食事致しましょう
特別室の白いテーブルクロスの敷かれた席の真ん中に
超お嬢様校の歴史あるセーラー服を着た歌晏桃子姉ちゃんが、笑顔で座っていた
もちろん、警護役のセバスティアヌスこと山田梅子さんも来ている