桜子さんの眼を見てオレは言った
そうだしても、眼の前の状況が変わったんだから改めて、桜子に選択させるべきよわたくしは、そう思うわ
桃子姉ちゃんは、断固としてそう言う
それは桃子姉ちゃんの場合だろ桜子は桃子姉ちゃんとは違うんだよ
何が違うのよいくら公ちゃんでも、そういう決めつけをするのは許さないわよ
いいえ旦那様がおっしゃっていることは、決めつけなんかではありませんわ
みすずがオレたちの間に入る
わたくしも、そう思いますわたくしたちには桃子お姉様のような心の強さはございませんわ
わたくしも、優柔不断な性格でございますしこの半年間、色々なことを体験して参りましたから今の狩野様のお心は、良く判ります
美子さんも口を開く
歌晏様は、どんな状況にあっても常にご自分で、ご自分の行くべき未来を選択なさる強さをお持ちですけれどわたくしには、そんなことはできません眼の前の急激な変化にただ慌てふためいて、その場に立ち尽くすだけになってしまいますわ
美子さんはずっと、瑠璃子やジッちゃん、それにオレとの距離を取り方を悩んでいる
美子さんはゆっくり時間を掛けて、自分の進む方向を決めてくれていいんだよ
オレたちは、みんな一緒に住んでいるんだし慌てて、何かを決定しなくちゃいけないようなことは無いんだから
時間は幾らでもある
でも、桜子には時間制限がある夕方の5時までにオレは、桜子に判ってもらわないといけないことがあるんだ
桜子さんは驚いた表情でオレを見る
どういうことよちゃんと説明してちょうだいそうでないとわたくしにも桜子にも、判らないわよ
桃子姉ちゃんが、怖い顔でオレに言う
そうだなオレが判って欲しいのはつまり
もう、元には戻れないんだからさ
そう桜子さん自身が、自分の秘密を知ってしまったんだ
本当の母親の辛かったであろう生活と無惨な死のことを
知ってしまった以上は知らなかった頃には戻れない
戻れないのならその場に呆然と立ち尽くしているんじゃなくって前に進むしかないんだよ自分で腹を括って
桜子さんにオレは、そう告げた
でも、わたくしは何をどうすることが前に進むことなのか、自分では判らないんです
桜子さんは、苦しそうにそう言った
ああだから、オレが後ろから、思いっきり背中を押してやるんだよ
ああ、やっと桜子さんが、オレの眼を見てくれた
ショックなことが起きて何をどうしたらいいのか、自分では判らなくなっちゃって呆然としたまま動けなくなる時もあるよオレにもそういう時期があった
今年の4月親父がオレを捨てて、失踪した頃
本当に、この先どうやって生きていったらいいのか判らなくなっていた
オレは泥沼にハマッたように何もできないで、ただもがいていた
そういう時にはさ誰かに、ドンと背中を押してもらうしかないんだよとにかく、立ち止まったままじゃダメなんだ前に進む、キッカケが必要なんだよ
オレにとってはそれはミナホ姉さんとの出会いだった
犯罪組織黒い森の一員となることでオレは前に進めた
やらなきゃいけないこと、オレがするしかないことが次々に見つかってオレは、今でも進み続けている
自分1人で停滞から抜け出ることができない人は旦那様のような方に、助けていただくしかないんですわあたしもそうでした
わたくしもお兄様に救っていただきました
瑠璃子もニコッと微笑む
今、振り返ると確かにあの時のわたくしは停滞していました自分自身ではどうすることもできないような状態で、もがき苦しんでおりましたわ
ジッちゃんに美子さんと2人だけに隔離されて成長した瑠璃子は
あの頃、限界に達していた
そこに父親が、シザーリオ・ヴァイオラの事件で頓死して
さらに、瑠璃子を追い詰めた
だから、ジッちゃんはオレに瑠璃子を売り飛ばすことで
瑠璃子を全てのしがらみから、解放したんだ
でも、公ちゃんが背中を押すというのはつまり、アレをすることなんでしょ
桃子姉ちゃんは困り顔で言う
うん、オレはこの後、桜子さんを徹底的に犯すつもりだ
それでいいんですわそれが旦那様のやり方でございますから
はい何も問題はございませんわ
みすずと瑠璃子は、にこやかに桃子姉ちゃんに言う
桃子お姉様は歌晏様と香月様が、公に桜子さんのことを任された理由をお考えになられるべきですわ
桃子お姉様には、まだお判りにはならないのでしょうけれど公なら、ちゃんと時間までに桜子さんを助けますわわたくしたちには、よーく判っていますから
そうねこのお部屋の中にいる女たちは桃子お姉様と山田梅子さん、桜子さんと不知火さん以外の全員が、旦那様のお力を信じておりますわ
みすずが部屋の中の女たちを見て、微笑んで言う
みすず、瑠璃子、美智、まり子、美里、克子姉、レイちゃん、ヨミ
みんな、オレの女だ
美子さんとはセックスしていないけれど彼女も、オレとセックスするようになってからの瑠璃子たちの変化を、ずっと見てきている
そうあなたたちは、わたくしが判っていないと言うのね
ムスッとして、桃子姉ちゃんは言う
仕方ありませんわこればかりは自分で経験したみないことには、理解できないことですもの
みすずが、やんわりと桃子姉ちゃんに言う
まあいいわ公ちゃんに任せますそうねそれがお祖父様たちの決定なんですものね
不承不承桃子姉ちゃんは納得してくれた
ヨミ後、どれくらいかかる
オレは高橋青年とその警護役の男の記憶を改変しているヨミに尋ねる
もうちょっとだけ待って下さいあんまり複雑なことをすると、この人たちの心に歪みが生じるからここ数日の狩野家に関することだけ記憶喪失になってもらっていますわついでに狩野家というキーワードを聞いたら、激しい頭痛がして何も考えることができなくなるように書き込んでおきます
慌てなくて良いから、ゆっくり確実にやってくれ
巫女の力が変に作用すると簡単に精神崩壊を引き起こす
高橋青年たちを再起不能にしてしまうのは、さすがにマズイ
そうねじゃあ、わたくしは、コーヒーでも飲んで待っているわ
桃子姉ちゃんは、アイスコーヒーのストローを咥えて吸う
それならオレは桜子の乳首でも吸おうかな
オレは、桜子に言う
こ、ここでですか
驚く桜子
大丈夫だここは特別室だから部屋の中から呼ばない限りレストランの定員さんたちも、入って来ないんだろ
追加の注文は、内線電話を通じてのみ
ボーイさんが中に入る時には、外からチャイムを鳴らして知らせてくれる
そして、部屋のドアはレイちゃんが確認して、内側から開くことになっている