レイちゃんよろしく頼む
不知火父と3人の臨時雇いの部下たちのことをレイちゃんに頼む
山田青年が信用できる人なのかどうかはオレにはまだ判らないし
それでもとにかく
オレは、ドアを閉める
シュカッッッとドアが電子ロックで固定される音がした
昨日は母の店の件で、法務局へ行ったのですが
書類の不備で、追い返されました
以前は父が担当していたことが父がどんどんボケてしまっているので
何をどうしていたのか記憶が曖昧になっているのです
父のパソコンの中を見て前はどうしていたのかを探っているのですが、なかなか上手くいきません
書類は作り直して、連休明けにまた法務局まで行かないといけない
1248.桜子・売春したいお嬢様 / 困った父親
・歌晏雲英/82歳名家・歌晏家の当主桃子の祖父
・狩野典明/48歳名家・狩野家の当主桜子の父親
・狩野聡子/45歳典明の妻桃子の実の母ではない
さてこれで、この部屋は密室だここでの話は、外には漏れない香月が作らせた施設なのだから、間違いは無いと思うそうだな、みすずくん
密室と化した部屋の中で歌晏老人が、みすずに尋ねる
今、この部屋の中にいるのは
最初から、部屋の中に居た名家・歌晏家の当主であり、桃子姉ちゃんの祖父もあるこの老人と
名家・狩野家の当主である、桜子さんのお父さんとお母さん
この3人だけが、椅子に座っている
後から入室したのはオレと克子姉の黒森家組
香月家を代表してみすず
歌晏桃子姉ちゃんとまり子は、桜子さんの付き添いだ
そして、今日の事件を引き起こした張本人である狩野桜子さん
はい、ご安心下さい歌晏様
みすずが、歌晏老人の問いに答えた
ここには、いかなる盗聴機器も会話を記録する装置もございませんわ
ああ君たちが来る前に、うちの太一に一通りのチェックはさせたあいつが問題ないと報告してきたのだから、そうなのだろうとは思うだが、一応、みすずくんに香月家としての公式見解を示しておいてもらいたかったのだ
オレは前にジッちゃんが訪問する場所に、翔姉ちゃんが先乗りして、盗聴器や爆発物なんかが仕掛けられていないかチェックするのを見せてもらったことがある
3大名家・香月家の当主であるジッちゃんが日常的に、そういうことをしているのだから
香月家と並ぶ家柄の名家である歌晏老人の警護役の山田太一さんがこの部屋のチェックをするのは当然だ
香月家と歌晏家はとても親密だけど
そういうことをするのは、相手が気を悪くするかもしれないから止そうなんてことはこのレベルの人たちには、あり得ない
みすずくんが、はっきりと断言してくれないと典明くんたちが安心して、娘さんと話せないだろうからね
そう言って桜子さんの父親を見る
狩野典明氏まだ40代か50歳ぐらいに見えるこの人が、名家・狩野家の当主なのは
ジッちゃんや歌晏老人と同世代だった先代当主が、すでに亡くなっているからだ
わたしの太一、典明くんのところの不知火くん、香月家の藤宮くん警護役たちにも、席を外してもらったこのメンバーなら、お互いに胸襟を開いて話ができると思う典明くんも、そう思うだろう
ジッちゃんの言葉に狩野典明氏し、苦々しい顔でジロッとオレと克子姉を見る
香月家のみすずや、歌晏家の桃子姉ちゃん桜子さんの付き添いとして、従姉妹のまり子が来ていることについては仕方ないと感じているのだろうけれど
狩野典明氏にとっては、オレと克子姉は完全な部外者だ
ここから出て行って欲しいと思っていることは、表情で判る
さて先に、なぜここに香月が来ていないか、一応、理由を話しておいた方がいいだろうと思う
歌晏老人は、オレたちに言う
そうだここは香月家のホテルでしかも、ジッちゃんが色々な人たちと密談したりするのに使っている特別な施設だ
どうしてジッちゃん本人が来ないで歌晏さんだけが来ているんだ
ジッちゃんは名家全体のことをいつも考えている
今日、狩野桜子さんがしでかしたことは
香月家歌晏家と並ぶ狩野家の家庭問題なんだから
いつもならジッちゃんが自ら仲裁に来るような重要な案件だと思う
簡単に言うとな香月は今、とある大国の要人と会っている前からそういうスケジュールになっていて、変更することができなかったんだ
歌晏老人は、苦笑する
香月は80を過ぎた今でも現役だからな香月家なり、香月グループの表の顔は経営を司馬くんに任せたとはいえ、今でもあいつだ仕方ないあいつには跡を継がせる息子がいないのだから
ジッちゃんの長男美子さんの父親は、アメリカで殺されてしまった
殺害を指示したのはジッちゃんの次男、瑠璃子の父親だったこの人は、全ての悪事が露呈してオレたちの見ている前で、処分された
残っているのは、みすずの父親のジッちゃんの3男だけだだけど、この3男は国の高級官僚として、バリバリに働いている香月グループを継ぐ気は、今のところは無いらしい
その点、わたしは子供には恵まれたから家督はまだ譲ってはやらんが、公の仕事は息子に任せて、悠々自適の生活をしている隠居だよだから、香月と違ってヒマだけはあるもっとも、その代わり警護人などは、息子の方に良いメンバーを付けてやっているから、わたしの警護は若手の太一に任せているもっとも、この年齢になると毎日、顔を合わさないといけない警護人ぐらいは若い人にしたくなるんだどけだけキャリアがあっても、老けた警護人を連れて歩くのは嫌だよ気分が暗くなる
歌晏老人は、そう言って狩野典明氏を見る
君はよく不知火くんのような男を連れていられるなわたしだったら、ああいう体力の衰えてきた警護人は外に出さんよ屋敷の警備責任者にでもして、後進の指導をやらせるよ香月のところの谷沢くんみたいに
香月セキュリティ・サービスの谷沢チーフは今では、香月家の雇っている全ての警護人や警備員たちを監督する立場に居る
現場のことは全て翔姉ちゃんに任せて、自分は裏方に徹してくれている
谷沢さんは、現役の警護人ですよあの人は警護人に必要な、注意力も集中力も判断力も、全く衰えていませんし戦闘能力だって、本気で戦ったら香月セキュリティ・サービスの若い人たちを全員ノックアウトできるくらい強いですよ
オレは、谷沢チーフの名誉のために言う
ほうそうなのかね
歌晏老人は、笑ってオレに尋ねる
狩野典明氏の方は歌晏老人の話を遮ったオレに、ギョっとしている
オレはオレ自身は、全然強くないですけれど毎日、警護役の子たちと一緒に居ますから誰がどれくらい強いのかは、何となく判るようになってきました
オレが美智から習っている工藤流古武術は気を扱う武術だから