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相手の強さを瞬間的に肌で感じ取ることができるように訓練している

ふむでは、君は不知火くんをどう評価する

不知火父不知火シエさんのお父さんは

あの人はもう警護人は引退するべきだと思います

ムッとして、オレを睨み付ける狩野典明氏

歌晏老人は、さらにオレに聞いてきた

自分の能力に自信がなくなった警護人は現場に居るべきではないからです

君に何が判るんだ君はみすずさんの許婚者だということは知っているがだが、君は名家の人間じゃないだろう

狩野典明氏が、苦々しい顔でオレに言う

君のような子供に名家の世界の警護役のことが判るはずがない

娘の桜子さんが家を飛び出したこと

その件でジッちゃんと歌晏さんに、このホテルに呼び出されたこと

にも関わらず、歌晏老人がのらりくらりと、なかなか本題に話を勧めないこと

あげくに、オレみたいな子供に自分の警護役の能力を低く見られたこと

加納典明氏は、全てのフラストレーションをオレに叩き付ける

いや、わたしはそうは思わないね

歌晏老人は、笑って狩野典明氏を見る

典明くんは知らないようだから教えるがこの少年は、香月セキュリティ・サービスのオーナーだよ

狩野典明氏には、歌晏さんの言葉の意味が判らないようだった

香月は香月セキュリティ・サービスの全ての株を、こいつにやったんだつまり、こいつは最高の警護人たちを抱え込んでいる巨大組織のボスということだ

そんな馬鹿な

狩野典明氏は激しく驚いている

嘘じゃないです本当のことです

だいたい、こいつは普段から香月の警護役と親しくしているんだ今では、典明くんよりも名家の警護については詳しいと思うね

不知火父にしか警護されたことのない狩野典明氏より

オレの方が、数多くのプロの警護人たちの仕事を見てきている

でお前が不知火くんが衰えていると気付いた、具体的な理由は何だったんだ典明くんに判るように説明してくれ

歌晏さんは、オレに言う

それはだから、不知火さんは自分の今の力に自信が無いからそれで、ここに3人も部下を連れて来たんだと思ったんです

もっと詳しく判りやすく説明したまえ

つまりここのホテルは、香月家の城みたいなところじゃないですかホテルの中に、香月セキュリティ・サービスの職員が、たくさん配置されているわけなんですから

オレは、頭の中で言葉を選んで話す

ふむ、それで

それで、あの歌晏さんは、他にもたくさんの警護の人たちを連れて来ているはずですよね隠居してたって、歌晏家の当主なんですから直接の警護要員だけだって、10人以上は連れて来ているはずです

さっき歌晏さんが言ってた通りこの半年で、オレは警護のことについて色々教えてもらっています

翔姉ちゃんとレイちゃんという、二人のプロが詳しく教えてくれている

だから、歌晏さんみたいな立場の人がどのくらいの規模の集団で動いているかは、だいたい検討がつきます

ああ、その通りだわたしは車、5台でここに来ている

ああ、やっぱりジッちゃんと同じか

でも、歌晏さんはこの部屋、いえ、ここのフロアに来る時には、自分の警護担当者を山田太一さん、一人だけしか連れて来ていません

ここのフロアにエレベーターで降りてからこの部屋に来る廊下にだって、他の人が居るのをオレは見ていない

人の気配は全然感じない

だから、確実にこの階に、歌晏家の他の警護員たちは来ていないと判断する

勝手に部屋のチェックなんかはやるけれど連れて来るのは、あくまでも山田太一さん一人だけ一人だけに絞ったそうなんですよね

オレを見たまま、歌晏さんはフフッと笑う

そういうことだそれが、このホテルでのルールだ考えてみろここは普段は、香月が人を呼んで密談する場所だぞそういう部屋に警護の人間を、何人も連れて来るのは無粋だとは思わないか

確かに、そうですね

オレはうなずく

例えば、3人ぐらいの人が集まって密談しようと思ってて

それぞれが3人も4人も警護の人間を連れて来たら

部屋の中は人だらけになってしまう

お互いの警護人が警戒し合ってしまうだろうから密談なんてできなくなる

だから香月は、このホテルを建築する時にわたしたち専用の地下駐車場や、そこから密談用のフロアまで直通で繋がっているエレベーターなどを、様々な仕掛けを造らせたんだわざわざ香月がここを安全な場所として提供してくれているのに無粋なことはできんよ警護人を連れて来るのなら、一人だけというのが、このホテルでのわたしたちの決まりなのだだから、わたしは太一以外の警護の連中は、全て地下に残して来たのだ

歌晏老人は言う

この間、お前と会った時などは太一も下に置いてきた

そうだこの前に、このホテルで

オレが、最初に歌晏さんに会った時は

この人は、警護役を連れていなかった

お前を警戒させたくなかったのだお前がどんな人間なのか日常的な様子を見たかったのでな

あああの時はオレは、この人はジッちゃんの友達なんだと思っていた

確かに、歌晏さんが自分の警護役を連れて来ていたら、オレはもっと警戒していたと思う

ところが不知火くんは、あのような輩を3人も連れて来たこれはどういうことなんだろうね

歌晏老人は、狩野典明氏に振り向く

わ、わたしはこの場所に、そういうルールがあることは知らなかったんです本当です、信じて下さい

狩野氏は聞かれたことの答えではなく弁明を始めた

ああ、そうだろう典明くんは知らなかったんだろうね

つまり、この人は狩野家の今の当主だけれど

今までに1度もジッちゃんに、ここのフロアに招かれたことは無い

だが、典明くんが知らなくても、不知火くんは知っているはずだよ彼は狩野が生きていた頃には、警護役として何度かここの部屋にも来ていたはずだ

先代の狩野家の当主はジッちゃんに招かれて、ここに来ていた

だから、不知火父が連れて来る警護人は一人というルールを知らないはずがない

例えルールに違反することになるとしても、不知火君くんがここに部下を連れて来てしまったのはこの少年の言う通り現在の自分の能力に自信が無いからだと思う身体も精神も、すっかり衰えてしまっているから自分1人では、うちの太一や香月家の藤宮くんには敵わないと不知火くん自身が判断したからだろうね

注意を払うためには眼と耳の数を増やすしかない

山田さんやレイちゃんから感じるプレッシャーにも、まとまった人数で何とか対抗しようと試みている

警護人としてのプライドを捨てでも香月家や歌晏家の警護人と力が拮抗していないと、狩野家の恥辱になると考えたんだろう