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どうしてあいつはわたしや香月に相談してくれなかったのだろう水くさいと思ういや恥ずかしすぎて、相談できなかったのだと思うあいつにも名家・狩野家の当主としてのプライドがあったんだろうあいつは、いつもそのプライドの高さのせいで失敗を重ねていた

香月家や歌晏家と同じくらい家格の家が没落寸前にまで失墜してしまったのは、桜子さんのお祖父さんの代のことらしい

あいつが生きていたら、1発ブン殴ってやるところだが

3大名家の当主として歌晏老人とジッちゃん、そして狩野家の先代は親しい関係にあった

それなのに、狩野家の先代は息子がしでかした不倫事件のことを、歌晏さんたちに相談してくれなかった

相談できなかった

死んでしまった人間のことだから悔やんでも、どうすることもできん桜子くん、済まない君のことはわたしや香月は、君のことについてもっと早く気付くべきだったのだ

そして歌晏さんも親友の家で起きていることについて、察してあげることができなかった

いいえ歌晏様や香月様にはいつもお助けいただいております狩野家の人間で、お二人に感謝していない者はおりません

家が傾いた狩野家が、それでも何とか名家としての体裁を保っているのは

歌晏家と香月家が、色々な形で保護しているからだ

家と家のことと君自身のことは別だ君はあいつの孫娘だわたしたちには友として、死んだ狩野の子や孫を見守る義務がある

そして歌晏さんは狩野典明氏を見た

同時に名家を束ねる者として、名家の誇りを守るために、厳しい処断を行う義務もある

処断

わたしも香月も、君が犯した過去の罪について今更、処分を下すつもりはない

過去の罪桜子さんの本当のお母さんを死なせたこと

いや、あれは妻以外の女と関係を持って、桜子を産ませたことはわたしの罪かもしれませんけれどあいつが、わたしと関係が切れた後に売春婦になったこととかましてや死んだことは、わたしの責任ではありませんっ

狩野典明氏は、叫ぶ

それはあいつ自身のせいでわたしとは、全然、関係がないことですっ

そう考えられる君は、幸せな人間だと思うよだが、君はそういう人間なんだなまあいい、わたしは過去のことを問い詰めるつもりは無いと言った

歌晏老人は典明氏を見て

問題なのは、常に現在とそれに繋がる未来だ

重い声で言った

今の君に名家・狩野家を背負うだけの資質はあるのだろうかこのまま君に狩野家を委ねていて狩野家に未来はあるのかわたしと香月は、そのことだけに注目している

名家の当主としての資質

桃子、それからみすずくん君たちの眼から見て今の典明くんをどう評価する典明くんは、このまま狩野家の当主の座にあって良いのだろうか

歌晏さんは2人の名家の令嬢に尋ねる

大変失礼だとは思いますけれど

わたくしには狩野典明氏には、名家の長たる資質は無いと思いますわ

みすずも狩野典明氏の資質を疑う

2人とも何でそう思うんだね

歌晏さんは、孫娘たちに尋ねた

狩野様は常にご自分の立場でしか、物事が考えられない方だと感じたからです

人の気持ちが理解できない方だと思いましたわ

狩野様は桜子さんとセックスしたということで、旦那様を叩いていらっしゃいましたけれど

そうよねご自分も、桜子の本当のお母様に誰かに叩かれるのようなことをしているのよね

結婚しているいい歳をした男がアルバイトの女子大生と不倫し、子供を産ませた

しかも、生まれた子供を奪って追放し、一切フォローしないまま死なせてしまった

桜子の本当のお母様のご縁戚の方たちに一生、憎まれるようなことをなさっていますわ

桜子さんの本当のお母さんの親や兄姉や親戚や友人たちの中には

狩野典明氏のことを殴りたいと思っている人が何人もいるはずだ

そういうことを想像できなくて狩野様の中ではもう済んだことにしてしまっていらっしゃるみたいですわね

だから、平気で旦那様を叩くことがおできになられるんですわ

桜子は狩野様が過去になさったことにショックを受けて、こんな騒ぎを起こしたというのに

狩野様はご自分には何の責任も無いと本気で思っていらっしゃるんですから

そういうお考えの方がわたくしには、名家・狩野家の当主に相応しいとは思えませんわ

桃子姉ちゃんとみすずは言う

わたしもそう思う

歌晏老人は

先程から、わたしは典明くんの態度をずっと見てきたが狩野家の問題について、香月が場所を提供し、わたしがここに来ているというのに典明くんから、ねぎらいの言葉を聞いていない普通は言うんじゃないのかねご迷惑をお掛けして申し訳ありませんとか本日はご足労いただきありがとうございますとか

ああ、狩野典明氏はオレたちがこの部屋に入って来た時も、ずっとムスッとしたまま偉そうに座ってたよな

君は、わたしや香月が、狩野家のために動くのは当たり前のことだと考えているようだがわたしたちは名家全体を守るということと、死んだ君の父親に対する友情から行動しているだけだ狩野家の家臣になった覚えはないぞ

当事者としての自覚が欠けているとしか思えないこの状況で、そんな態度でいられるというのはどうかしているとても、名家の当主に相応しいとは思えない

判らないのかねわたしはここに、君の審査に来たのだそして君は不合格だわたしの審査結果を、香月も受け入れてくれると思う君には歌晏家の当主の座から降りてもらうことになるだろう

キッパリと宣告する

ちょっ、ちょっと待って下さい幾ら歌晏様でもそれは横暴ですあなたたちが、狩野家の家臣ではないようにわたしだって、狩野家だって歌晏家や香月家の家臣ではありません名家はそれぞれが独立した存在のはずです誰が当主なのかは、家の人間が決めることで歌晏様が口出しなさることではないと思います

慌てて狩野典明氏は文句を言う

普通の名家なら、そうだろうが今の狩野家は、わたしと香月の援助で家を保っていることを忘れてもらっては困る

わたしたちの意に反するというのなら全ての援助を打ち切る他の名家の連中たちにも、狩野家との付き合いを考え直すように忠告する

歌晏家と香月家だけでなく全ての名家が、狩野家との関係を断ち切ることになる

ははっ、あなたはそうやってわたしを脅しているようですが狩野家は、歌晏家、香月家に並ぶ名門ですあなたたちが、本気で狩野家を潰すようなことは絶対にしないことをわたしは知っていますよ

ジッちゃんたちは名家はなるべく減らしたくないと思っている

名家中の名家である狩野家が潰れるのはマズい

だから、今までも援助して来た

ああ、狩野家は残すよだが家と君は別だ君がいなくなっても、狩野家が残ればいいのだ