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姉さんはどちらかと言えばFPSやアクションが得意な紡と違ってRPGが得意なタイプだ。なので確実に、失敗しない強さを獲得している。

仮に姉さんと紡が戦えば、姉さんがOKを出した時、紡の方が倒れているはずだ。

無論、戦争の申し子である紡相手に姉さんがOKを出す事はそうそう無いが。

そんな姉さんが本気を出して、紡の様な最前線にいないのは武器選びに三日も費やしてしまったからだそうだ。

自分に合うスタイルで無いと安心して戦えないと、全ての武器を試したというのだからゲーマーの鑑とでも評価しておこう。

「絆お兄ちゃんはどうだった?」

「ああ、程々に面白いぞ。魚釣り」

「え? 絆、釣りしかやってないの?」

「そ、そうだけど? 何を隠そうこの街から一歩も出ていない!」

二人から変態を眺める冷たい視線が!

特に何か目覚めない俺はMでは無いのだろう。心の底からよかった。

「ん~……絆お兄ちゃん、第二都市の方に川があるから行って見たらどうかな? 使ってる武器なに?」

「解体ナイフ」

「攻撃力に問題があるのよね~。モンスターを倒すと武器に応じてドロップアイテムが増えるだったかしら」

「そうそれ」

どうやら本来の用途は前線プレイヤーの二人でも知らない事らしい。

二人からすればネタ武器なのかもしれない。

「それでしか手に入らない奴があるから、手に入ったらちょうだい!」

「そうなのか」

「結構多いのよね。だからプレイヤー間取引で高くても買う人は多いわ。でも威力が低いから使う人が少ないのよ~ドロップもそんなに多い訳じゃないから」

「なるほどな~じゃあそろそろ俺もモンスターと戦ってみるかな」

面白い話を聞いた。

もしかしたらモンスターの方も解体が通じるかもしれない。

言葉通り明日からはモンスターと戦ってみよう。

となると武器をそろそろ買わないとな。

あまり必要を感じなかったから空き缶商法の時も結局新調してなかった。それに該当する武器でモンスターを倒すと言った。

そうなると初心者用では解体できないかもしれない。

「絆お兄ちゃん用に良い装備買ってあげようか?」

「妹に奢られるのは兄としてのプライドがな……」

「何言ってるの~普通のネットゲームだといつもレアアイテム貸して上げてるじゃない」

そうでした。

このゲームはリアリティが高いので度々現実の様に感じるがゲームでしたね。

「まあでも金には困ってないから、紹介してくれれば自分で払うぞ」

「魚釣りしてただけなのに?」

「つい最近まで売ってたアイアンのインゴットあったろ?」

「え? うん。昨日まで使ってた」

「実はな、アレの材料を集めていたのは、俺だ」

「そうなの? 材料なんだったの? アルトレーゼって人が企業秘密とか言うから分からなかったのよね~」

「鉄鉱石が出て来たから、情報公開する事になってな。まあそれで金には困ってないんだ」

「それでそれで、どこで手に入るの?」

ぴょこぴょこと狐耳が跳ねる紡へ不敵に笑い口を開く。

「あれの材料、空き缶なんだぜ?」

二人の驚く顔を眺めながら、俺はこの一週間に多少の満足感を得たのだった。

武器と船

翌朝。

俺は宿屋の自室で巨大ニシンを解体していた。

初心者用解体ナイフでは大きさに問題があり、捌き辛いがゆっくりと解体していく。

マグロ包丁でもあれば良いんだが、生憎とそんな物は持っていない。

まずは鱗を峰で一枚一枚剥がして行き、鱗を全部剥がし終わったら腹下に刃の先端を差し込みサーっと尾の方まで一気に引き裂いて開いていった。

最終的に取れた材料は――

低級王者の鱗、低級王者の髭、低級王者の牙、低級王者の心臓、低級王者の瞳、低級王者の太骨、最高級ニシンの肉、最高級ニシンの卵。

こんな感じだ。

このニシン、メスだったんだな……なんてアホな事は言わない。

解体マスタリーもⅡなので多少は補正を掛けてくれる影響、幸いにも全て捌けた。ちなみにこの後、紡の知り合いに武器と防具を作ってもらう約束をしている。

ぬしから取れた素材があるので、もしかしたら良い武器が作ってもらえるかもしれない。

「勇魚(いさな)ノ太刀というのが作れるね」

そう言ったのは紡の知り合いの鍛冶師だった。

前線で使われている武器の半分を作っていると噂が立つ程の腕前で、今人気上昇中。

種族は晶人。

胸に付いた赤い宝石が煌いて、かっこいい。

ちなみに女性だ。どうでもいいが、そこは男として気になる所。

「それにしてもこんな材料どこから手に入れたんだい? 職業柄色んな材料を見てきたけどこんな材料は始めてだよ」

「えっと海で釣ったんです」

「ああ、昨日第一で騒がれていたのは君か!」

どんな風に騒がれていたのでしょうかね。

ともあれぬしの材料から強そうな解体武器が手に入る。

俺はキラキラした目で見つめていると鍛冶師の女性は照れ臭そうに金槌を握る。

「武器作成!」

そう叫ぶと金槌が神々しく光る。

その光は使うランクの高そうな携帯溶鉱炉などにも伝染して、材料を溶鉱炉に入れる。するとドロドロになった溶け出た光る液体が金敷に広がり、カンカンと金槌を強く叩いた。

実際に鍛冶がどんな手順なのかは知らないが、見ていて面白い。

鍛冶師も面白そうだな。まあ今は釣りと解体だけで精一杯だが。

それからどれ位か経った頃、勇魚ノ太刀は完成した。

「……結構デカイな」

太刀というだけあってかなり大きい。

某狩猟ゲーにでも出て来そうな。そんな大きさだ。

これで解体系の武器だと言うのだから二度目の驚きだ。

「おや? +が付いている。10本に1本位しか起こらないのだが、君は運が良いね」

渡されたのは勇魚ノ太刀+1、思ったよりも軽い。

きっと解体マスタリーの補正があるからだろう。

「そういえば思い出した。勇魚は鯨の事だったはずだ」

「へぇ……」

鯨用の武器かは知らないが、あんなに大きな生物を切る為の刃物なのか。

切り札として持って置こう。

そんな感じで他、鉄ノ牛刀、アイアンガラスキ、アイアンペティナイフ、の三つも作ってもらった。

上から獣系、鳥系、植物系の三つだ。