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落ち着いて考えているが、内心では相当焦っている。

下手をすれば今日の分所かこれまでのエネルギーを全て失ってしまう。

何か良い手段は無いか。

「それは自分も一緒でござる! 自分は死ねないのでござる!」

「待て。俺達は分かるが何故お前まで死ねない。他の種族ならちょっとしたデスペナルティがあるだけでそこまでマイナスにはならないだろう」

「自分、スピリットでござる故」

「…………」

俺は手を額に当てて仰いだ。

少ないと噂のスピリットがどうしてよりにもよって、こんな過疎ダンジョンに三人も集まっているのか。どれだけ奇跡的な確率だって話だ。

「俺達もだ」

「なんと、同郷の者でござるか!?」

「同胞の方に出会えたのは嬉しい限りですが、できる事でしたら別の場で出会いたかったです」

「同感だな」

言葉通り可能ならばこの黒装束とは別の機会に出会いたかったよ。

どうでもいいが、三人そろって『同』って言葉使い過ぎじゃないか?

「しかし今は辛酸を飲み込んで耐えましょう。今私達に必要な事は責任の押し付け合いではありません。この危機をどう乗り越えるかです」

「そうだな。硝子の言う通りだ」

何か策を講じるにしても簡単な手段がボスに通じるとは思えない。

曲りなりにもボスだ。硝子はまだしも俺は解体武器という致命的な武器を使っている。

正面からの戦闘で勝利できると考えるのは明らかに無謀だ。

まして目の前の黒装束を期待するのも無茶な話だ。

何故なら、こいつはボスから逃げてきたのだから。

「この罪、死を持って償うでござる!」

「それがダメだから考えているんだろう?」

「幼子殿……」

……おい。幼子ってなんだよ。

少なくとも小学生程度だろう? キャラクター的にさ。

「絆だ。幼子はやめてくれ」

「これはご丁寧に。自分、闇影と申すでござる」

「……忍者か?」

「忍者って実在したんですね」

「いや、これゲームだからな?」

「そ、そうでした……」

ともあれ俺達は簡単な自己紹介を済ませる。

黒装束の名は闇影。

かなりステレオタイプの忍者をロールプレイしていると思われる。

オレっ子ネカマ、和風敬語少女、ござる忍者。

……なんて痛い連中なんだ。俺達は。

「ボスはまだ洞窟前にいるのか?」

「移動する気配すらござらん」

「確認だが、モンスター名を言えるか?」

俺は視線だけを硝子に向けると直に硝子はこちらの視線に気付いた。硝子は相手の目をガン見で話をするからな、こう言う時は便利だ。

付き合いは短いが意思を伝える事だって無理ではないはず。

問題は、視線を送っているのに不思議そうに『?』マークを浮かべている事だろうか。

こりゃダメだ。

まあ俺達は今日出会ったばかりだからな。目と目で通じ合うなんて普通に無理だよ。

ちなみに何を伝えたいかはボスモンスターの名前は合っているか、だ。

闇影が嘘を付いているとまでは言わないがスピリットである俺達をMPKしようとしている、なんて最悪な可能性だって0じゃない。

「リザードマンダークナイトでござる」

「訊ねるまでも無いと思うが、三人で勝てるか?」

「不可能でしょうね」

「無理でござろうな」

三人で勝てるならボスとは言わないよな……。

何よりネットゲームのボスは異常に強いと大昔から決まっている。それこそ何十人と揃って初めてまともに相手できる。それがネットゲームのボスって存在だ。

しかし、そうなると数える程しか手段がなくなってくる。

残念ながらどれも期待は出来ない賭けレベルの手段だが。

「なんでも良い。この場を潜り抜けられる手段、思い付かないか?」

「逃げるというのはどうでござろうか」

「お前はそれで命からがらここに逃げてきたんだろ? 目の前を通過して逃げ切れるか?」

「無理でござるな」

逃走作戦は否決。

次に挙手したのは硝子だ。

俺の目を硝子の瞳が透き通る様に見詰めてくる。

「どんな案だ?」

「誰かが囮になるというのはどうでしょう」

「無難な案だが、誰がなる」

「言いだしっぺの私がなりましょう」

随分と威勢は良いがその案は俺的に否決だ。

硝子は以前にもボス戦でエネルギーを大量に失っている。個人的意見になってしまうが、スピリット仲間として同じ事を繰り返させたくない。

「反対だ」

「自分も反対でござる!」

意外にも闇影の方が強く反対意見をプッシュしてきた。

こいつもスピリットらしいから意見が合うのかもしれない。

「どうしてですか? 状況的にそれが一番でしょう」

「函庭殿の意見を採用するのであれば自分がその任を受け持つでござる」

「悪く思われるかもしれませんが絆さんや闇影さんでは防御面の問題で難しいかと思います。その点私なら扇子の防御スキルがありますから、運が良ければ逃走も可能です」

「しかし、事の原因は自分。見ず知らずの同郷の者を犠牲にする訳には――」

売り言葉に買い言葉とは正にこの事か。

硝子と闇影はお互い自分が犠牲になると言い合っている。

「どっちも反対だ。お前等何、自己犠牲精神発揮してやがる! 重要なのは全員でここから脱出する事だろう?」

二人は俯いて地面を見詰める。

これがマンガか何かに登場するデスゲームなら感動的瞬間だろうが、死人が出ないこの世界で自己犠牲の問答をしても意味がない。当然半MPK状態にしてしまった闇影にも問題はあるが、わざとではないのだから追求する問題じゃない。

全員が全員不遇種族であるスピリットを使っているのだから、気持ちは誰よりも分かるはず。そんな俺達が誰かを同族を犠牲に助かりたいだなんで考えるのも嫌だ。

今は一つでも助かる手段を考えるのが先決だろう。

「そういえば聞いてなかったな。闇影はどんなスキル構成なんだ?」

「自分は夜目Ⅰ、潜伏Ⅰ、ドレインⅦでござる」

「ドレイン?」

「闇魔法の項目にある、HPやMPを敵から奪って自分の物にするスキルです」

「へぇ、そんなのがあるのか」

「然様でござる。スピリットで使えばエネルギーをモンスターから吸収できるのでござる」

中々に便利じゃないか。

だが、Ⅶってどれだけ上げているんだよ。

「お前って実はエネルギー高い?」