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「今まで幾度とパーティーに入ろうかと考えたでござるが、結局話しかけられなかったのでござる」

「それは……大変でしたね」

なんか硝子が丸め込まれ始めている。

言ってはアレだが、その頭では現実で詐欺に遭いそうだぞ。

「質問良いか?」

「どうぞでござる」

「コミュ障害な割に俺達と普通に話しているが、そこはどうなんだ?」

「忍者言葉を話す事でどうにか話せているのでござる」

どんな理屈だ。

もう少し上手い言い訳をしてくれ。

「内心では今ですらビクビクなのでござる」

「まあ! 絆さん、彼女と共に参りましょう。私達は魂人同士なのですから!」

なんだろうな。この感覚。

あれだ。詐欺に遭った友人に高額な壷を売られている気分だ。

ま、まあパーティーを組むのはこの際良いが……ん?

「今なんて言った?」

「私達は魂人同士なのですから!」

「その前だ」

「彼女と共にしましょう、ですか?」

「そうだ、それだ。彼女?」

全身黒装束で、忍者みたいな格好をしている。なので今一外見が分からない。

口元も黒い布地で覆われているので声も判断し辛いし、どうなんだ?

「人前で素顔を出すのは恥ずかしいでござるが、共に戦うかもしれぬ身。自分の顔を見て欲しいでござる」

そういって頭まですっぽりと覆っていた布地を取ると……。

――銀髪美少女がそこにいた。

パーティー結成

「これから自分の事はダークシャドウと呼ぶでござる」

常闇ノ森から第二都市に帰還して第一声、闇影がそんな事を言い出した。

「はぁ?」

思わず、俺はそう返していた。

こいつは一体何を言っているんだ?

結局硝子の勧めで闇影はパーティーに加わる事になった。

その為なのだろう。かなりテンションが高い。

これもハイテンションがなせる技。典型的な中二病を発揮しているに違いない。

「わかりました、ダークシャドウさん」

俺は真顔でそう返した硝子へと視線を向ける。

なんていうか硝子って冗談とか通じなさそうだよな。

「わかったよ、ダークシャドウ。これから頼むぞ、ダークシャドウ」

「……」

「どうした、ダークシャドウ。何故黙っているんだ、ダークシャドウ。返事をしてくれ、ダークシャドウ。何か気に障ったのか、ダークシャドウ」

まくし立てる様に連呼すると闇影は慌てて訂正する。

「じょ、冗談でござるよ。普通に呼んでくだされ」

「そうか、じゃあこれからは闇子と呼ぶ事にするよ」

「では、私も闇子さんで」

「子はどこから出てきたのでござる!?」

そんなのお前が女キャラクターだったというギャップからだよ。とは言わない。

全身黒装束に靡く銀色の髪。

なんていうか、普通にかっこいいじゃないか。

しかも物理的な忍者ではなく、忍法を意識したジャパニメーション的忍者。

少々イロモノ感はあるが、俺は好きだぞ。

「そういや、さっきは言わなかったけど、パーティー組むにしても毎時間マイナス3000を補う程の狩りを期待するなよ? 俺は解体武器だし、硝子は扇子なんだから」

「問題ないでござる。既にドレインのランクは下げたでござる」

「おい、自分のアイデンティティ失ってるぞ」

「もちろん自分はこれからもドレイン一筋で行くでござる。しかし、主君である絆殿に仕える身としては絆殿の役に立てる身になるでござるよ」

「なんだって?」

なんか突然、主君だのなんだの言われたんだが。

ていうか、こいつがコミュニケーション障害なの、なんとなく分かるわ。

自分の中でしか分からない話を突然言い出す。

それを察する方としては少々厳しいが、一度パーティーを組むと言った以上、問題がなければ一緒にいる事になる。

「そういえば、俺達って臨時パーティーに近い感じだったはずだけど、この流れは固定パーティーで行くって事でOKなのか?」

「絆さんがよろしければ私、函庭硝子はこれからも共に参りたいと考えています。どうでしょうか? 私達三人は皆、魂人です。少々の問題でしたら他種族の方より、よろしいと思うのですが」

「自分は絆殿と函庭殿に救われた身、お二方の影となるのが使命と心得ているでござる」

二人して似た様な話を、小難しい言い方で捲くし立ててくる。

ていうか、なんで二人とも和風っぽいんだよ。

「なぁ。俺が空気読めないだけなのかもしれないが、お前等って知り合いだったりしないか? 最初から仕組まれていた様に見えるのは俺だけかな?」

ほんの一日でスピリットが二人もパーティーに加わった。

どちらも何故か個性的なロールプレイとスキル構成。

いや、俺がまるで違うとは言わないが、これからやっていくのに一抹の不安が残る。

もちろん『良い意味』での不安だが。

「絆さんの言葉通り、仕組まれていた様に魂人の私達が集まりましたものね。まるで運命に呼ばれる様でした」

いや、運命って……ちょっと恥ずかしいぞ。

まあパーティーメンバー全員がスピリットなのは少し優越感に似た嬉しさがあるけどさ。

「全体人口では少ないでござるが、絶滅危惧種という程でもござらんよ」

「へぇ」

「自分は今までドレインを繰り返す日々を送っていたでござる。故に各地を転々としていたでござるが狩り場で同郷の者を何度も目撃しているでござる」

「そうなんですか? 私の周りではあまりお見かけしなかったので、てっきりとても少ない種族なのかと考えていました」

全ての人がネットの裏情報に詳しいとは限らないしな。

その中からスピリットを選んでしまった奴等がいたとしても不思議はない。

中には弱い種族だからと選ぶ奴だっている。それにスピリットの、この幽霊的な半透明感をかっこいいと思う奴は少なからずいると思う。

無論、能力だけで物事を語る奴も世の中には沢山いるが。

しかし闇影の近くで偶に見かけて、前線組の硝子の所では見かけないと聞くだけで、なんとなくスピリットの世間的状況が分かるな。

ちなみに俺が昨日までいた第一都市の海沿いでは極々稀に見かける程度だ。

「まあスピリット同士気兼ねなく付き合えるから良しとして、これからどうする?」