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「これからとは?」

「う~ん、この後寝るか続けるかって意味で聞いたんだが、パーティーの今後でもいいな」

既に夜は晩い。

第二都市は個人間で持ち寄った明かりが灯され、夜景を映している。しかし一般的な就寝時間と言えば大多数が頷く0時を回っていた。

「私としては、どちらでもかまいませんよ。早寝早起きと言いますし明日がんばるのも良いと思います。後者の方は私個人では以前と同じ程度の強さには戻したいですね」

「自分は今まで夜間に行動していたので5時位まででござれば問題ないでござる。行動指針の方は特に要望はござらぬので絆殿にお任せするでござる」

そういう意見が一番困るんだよな。

というか、何故俺が決める事になっている。

他のネットゲームではギルドマスターとかやった事あるけど、それもギルドスキル目当ての弱小ギルドだしな。

まあ俺も目的とかある訳じゃないし、硝子の目標に重点を置きつつ行動する感じか。

「ちなみに硝子、前はエネルギーどんなもんだったんだ?」

「5万程でしょうか」

「す、凄いでござる!」

「これでも硝子は元々前線組だったらしいぜ」

「なるほど、函庭殿は我等が師でござったか」

「そ、そんな、師と呼ばれる程の実力ではありませんよ」

いや、プレイヤースキル的に十分だと思うぞ。

洞窟にハメていたとはいえ、時折飛んでくる、当ったら唯ではすまない攻撃をしっかりと受け流していたからな。あれはきっと普通に戦っても防いでいたはずだ。

そもそも潜伏スキルで隠れていた闇影を当然の様に見つけたとか。

こう言わせてもらいますよ。

硝子さんマジぱねぇっす。

いや、心の中でしか言わないが。

もちろんステータス的に勝利に持っていけたかは別だ。仲間としての贔屓も入っているが硝子のプレイヤースキルが高いのは今更口にするまでもない。

「じゃあ狩り場とか硝子は知っているだろうし、三人で行ける場所を選んで進むって感じでどうだ?」

「異論はございません。私の意見を汲み取っていただいでありがとうございます」

「自分も問題ないでござる。むしろ沢山の魂を早く吸収したいでござる」

「それじゃあ決まりだな」

ともあれ、ここに俺達三人のスピリットパーティーが結成した。

どうでも良い補足だが、この後俺秘蔵の最高級ニシン食材を使った飯を三人で食った。

効率が良くて、金が稼げて、人がいない場所

翌日。

パーティー結成式という事で最高級ニシンやクロマグロを振舞ったらテンションが上がり過ぎて全員愚痴大会となり、結局酒に酔った訳でもないのに見事に爆睡してしまった。

「で、これはどういう事だ?」

昨日の事を思い出す。

道行く料理人に最高級ニシンを渡し料理してもらった俺達は川原で硝子の提灯片手に料理を啄ばみつつ雑談をした。

スピリットだからなんだっていうんですか、に始まり、コミュ障害で悪いでござるか、自分は誰にも迷惑を掛けていないでござる、だとか、奏姉さんと紡に強制されたネカマプレイへの愚痴を吐きつつも親睦を深めた。

それは良い。そこまでは覚えている。

だが、これはなんだ?

「う……ん……」

「……自分……ほん……は……ござ……なん……言わ……い……」

俺の瞳に映し出されるは浴衣の硝子と下着以外素裸の闇影。

そしてもちろん俺も下着以外素裸だ。

「え? 昨日何があった?」

このゲームは全年齢だ。ゲームの仕様上酒類は未成年に制限されている。なので酔った勢いで過ちを犯すなんて事はないはずだ。無論、いやらしい事だってシステム上再現されていない。

最近噂の18禁ゲームではVR機材を使ってヒロインとのエロ再現、なんて話を聞いた事があるが、そういうゲームじゃないから、このゲーム。

「えっと今何時だ?」

窓から照らす陽光。少なくとも朝日ではない。

カーソルメニューを開くと時刻は13・24。

思いっきり真っ昼間です。

パーティーを組んだ翌日に寝坊とかどんだけ自堕落なんだ、俺達は。

「おい、起きろ! 硝子、闇影!」

そう大きな声で叫ぶと硝子の方が眠そうな眼で体を起こす。

格好を見る限り一人だけ寝巻きを付けている。おそらくは眠った俺達を運んでくれたのではないだろうか。

「おはようございましゅ。絆しゃん……」

「まだ半分眠ってるな……」

前々から思っていたが宿屋のベッドが性能高過ぎる。

少なくとも4、5時間は眠ってしまう。

多分ゲームのやり過ぎに対する不眠対策としての処置なんだろうけど。

いや、今はそんな事を考えている場合じゃない。

「硝子、昨日何があった?」

「みなしゃん、眠そうにしていらっしゃっらので、宿に向かったのりぇす」

「うんうん」

呂律が回っていないが、どうにか意味は聞き取れる。

どうやら宿へは俺達三人自分の足で向かったみたいだ。

「あのじょうらいでは危なそうでしたのれ、皆で眠る為、大きなへやにしましら」

大体事情は把握した。

しかし、しかしだ。

「なんで俺と闇影はほぼ全裸なんだ!?」

「…………はっ!」

あ、完全に覚醒した。

硝子は周囲をキョロキョロと眺めると一度頷き、こう言った。

「絆さん、おはようございます。素晴らしい朝ですね」

とても清々しい笑顔だ。

「もう昼だよ!」

真実は酷く単純だった。

硝子は、そのままの格好で眠ってしまった俺達の衣類を思っての事だった様だ。

このゲームは衣服の皺とか妙に再現されているからな。

酷い皺になると、結構残るんだ。

ちなみにクリーニングみたいな店があるので、お金を出せばどんな汚れでも直してくれる。そんなに高い訳でも無いので女性プレイヤーは結構使っているらしい。

「本当にすみません」

「いや、謝らなくて良い。むしろ感謝したい位だ」

「その通りでござる。システム的に安全な宿で休息を取らなければ、何かある可能性だってあったでござる。函庭殿には感謝の言葉しか出ないでござる」

そう口にする闇影は、目を覚ました直後酷く狼狽していた。

なんでも他人に素肌を見せるのが恥ずかしかったとか。

しかも『み、みないで……』とか普通に言った。ござる言葉がロールプレイの一環なのは事実だろう。まあリアルでござる、なんていう奴見た事無いけどさ。